卵巣嚢腫の治療
卵巣嚢腫は乳牛の繁殖障害の要因です
近年、卵巣嚢腫の治療に排卵同期化および定時人工授精(TAI)が用いられているようです
そこで、卵巣嚢腫として診断された牛に、治療として2つの異なる
排卵同期化プログラムを行い、その効果を比較した論文について紹介します
「Comparison of two different programmes of ovulation synchronization
in the treatment of ovarian cysts in dairy cows.」
Reprod Dom Anim. 2009 Mar 5.
ホルスタイン種を飼養している10酪農場で試験を行い、
分娩後55~60日目(D0)の直腸検査により、黄体がなく25mmより大きな卵胞が
認められるものを卵巣嚢腫としました。
卵巣嚢腫の牛は無作為にA郡およびB郡に分け、下図に示す処置を行いました。
TAIは2回目のGnRH後24時間に行いました。
妊娠診断はTAI後42~50日に直腸検査で行い、非妊娠牛は3回まで処置を行いました。
治癒は卵胞嚢腫の消失と定義し、各治療後に算出しました。
・1回目の治療による治癒率はA郡(66.2%)がB郡(23.1%)に比べ有意に高かった。
・A郡において、治療回数1回だけの牛は66.2%(43頭)、2回が10.8%(7頭)、
3回が23.0%(15頭)で、16.9%の牛(11頭)が3回の治療を行っても妊娠しなかった。
・B郡において、治療回数は1回だけの牛は29.2%(19頭)、2回が10.8%(7頭)、
3回が49.2%(32頭)で、40.0%(26頭)が3回の治療を行っても妊娠しなかった。
と、言う結果が得られておりました
この結果より、卵胞嚢腫の黄体化は
GnRHとPGF2αとの共同作業が関わっていると考えられました
また、A郡はB郡に比較して薬剤が多く、投与間隔も長かったが、
不妊症により淘汰される牛の割合を減少することができたために
結果的に妊娠に至る経費を抑えられたということが報告されておりました
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