eCGの使い道:その①
eCGといえば、馬の子宮内膜胚(胎盤の一部)から生産され、馬でLH作用、他の動物ではFSH作用を強く示すホルモンとして、多くの方がご存知かと思います。
過去には過剰排卵処理によく用いられていましたが、半減期が長いため、発情後も卵胞が発育し続け、受精および胚の発育・輸送を妨げてしまうため、現在はあまり使用されていません。
学生時代に得たこういった知見から、個人的にはeCGにあまりよいイメージは無かったのですが、発情同期化関連の文献を見ていると、案外目にする機会が多いと感じています
これから木曜日に数回に渡り、先日出された総説を基に、eCGの使い道についてご紹介していきたいと思います
原著:Use of Equine Chorionic Gonadotropin to Control Reproduction of the Dairy Cow: A Review
著者:F De Rensis and F López-Gatius
出典 Reproduction in Domestic Animals Vol 49, 2, 177-182
序論:
eCGの歴史
eCGは妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG)とも呼ばれ。1936年に発見された。1938年に、eCG使用の国際基準が確立され、1941年には、eCGにより卵胞発育を促し、hCGにより排卵を誘起する「2段階プロトコール」がヒトで用いられた。このプロトコールは長期にわたり使用されてきたが、eCG投与により抗体が産生されることが問題視され、1972年にヒトでは用いられなくなった。対照的に、1934年に750IU投与が発情と排卵を引き起こすことが報告されて以来、牛では使用され続けている。
eCGの分子特性
eCGはLHやFSHと同じ糖タンパクホルモンのファミリーである。LHやFSHが全ての哺乳類の下垂体から分泌される一報、eCGは妊娠中の馬の子宮内膜胚(胎盤の一部)で生産される。eCGは二つのタンパク質の構成要素からなり、その一方のタンパク質の構造はLHと同一であるが、そのタンパク質に結合している糖鎖の違いにより、eCGのほうが肝臓での代謝や腎臓での濾過を受けにくいため、LHよりも半減期が長い。牛に1500IU投与すると、血中での生理活性は5日程度持続する。
また、eCGは卵巣上のLHとFSH双方の受容体に対する親和性が高いため、双方の反応を引き起こす。よって牛では、繁殖をコントロールする動物用医薬品として用いられる。
一般的には、単一の排卵を促進するためには200~1000IU、過剰排卵を引き起こすためには2500IUが必要であると考えらている。
・・・今回はeCGの基礎的な内容について書かせていただきました。次回はeCG投与の卵巣上の卵胞への反応についてご紹介します。
コメント