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2021年2月 4日 (木)

受精卵はマトリョーシカ?

 卵子と精子が受精して受精卵になると、卵割(受精卵の細胞分裂のこと)を繰り返してやがて胚盤胞期というステージに達します。

受精直後の受精卵は「どんな細胞にもなれる」状態ですが、胚盤胞期では細胞はそれぞれのちに違う役割をもつ2つの細胞に分けられます。

下の図で青で示された細胞の塊は「内部細胞塊」、英語でInner cell mass : ICM とよばれ、将来胎子そのものになります。

一方でオレンジで示された細胞は「栄養外胚葉」、英語でTrophectoderm : TE とよばれ、将来は胎盤などになります。


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このように一度役割が決まってしまった(分化といいます)細胞は普通は元の状態に戻ったり、違う種類の細胞になることはできません。しかし胚盤胞期の受精卵をある状態にすることでその壁を乗り越えたという論文を紹介します。

Trophectoderm regeneration to support full-term development in the inner cell mass isolated from bovine blastocys
Kori N et al.,J Biol Chem.2019 Dec 13;294(50):19209-19223.

この論文によると、界面活性剤を用いて受精卵の栄養外胚葉の部分(オレンジ色の部分)を完全に除き、内部細胞塊のみにして培養すると、内部細胞塊から再び栄養外胚葉ができるということです。

さらに論文では移植も行っており、内部細胞塊から再生した胚盤胞からも子供が生まれることがわかりました。

栄養外胚葉が再び作られて胚盤胞になることをマトリョーシカに例えて、この牛は「マトリョーナ」と名付けられたとか。

特殊な環境に置かれた受精卵は、時に思いもよらない力を発揮するようです。

TKH

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