第1ウェーブ>第2ウェーブ?
牛の繁殖に携わっている方であれば、牛には1つの発情周期中に2-3回程度の卵胞発育の波(卵胞ウェーブ)があり、実際に排卵に至るのは後者だということは周知のことかと思いますが、最近この卵胞ウェーブについて、帯広畜産大学の研究グループより興味深い論文が出ましたので簡潔にご紹介いたします。
Evidence that the dominant follicle of the first wave is moreactive than that of the second wave in terms of its growthrate, blood flow supply and steroidogenic capacity in cows
(和訳:発育率、血流、ステロイド合成能の点において第1波主席卵胞の方が第2波主席卵胞より証明)
著者:三浦 亮太朗ら
ジャーナル:Animal Reproduction Science 2014 Mar;145(3-4):114-22
緒言
第1ウェーブの卵胞は黄体が未形成の時期に発育を開始するが、第2ウェーブの卵胞は黄体形成後の高プロジェステロン(P4)環境下で発育し、ステロイド合成能、血卵胞への血流は第1卵胞ウェーブが高いという報告がある。しかしどの報告も第2ウェーブの開始時点が不明瞭であり、第1ウェーブと第2ウェーブの発育に与える相違点がはっきりと評価されているわけではない。本研究では第1卵胞ウェーブが発育し、黄体がしっかりと形成された後、排卵促進剤により第1ウェーブの卵胞を排卵させることで、その後の卵胞発育を高P4環境下で発育する第2卵胞ウェーブのモデルとし、卵胞の直径、卵胞への血流、ステロイドホルモン合成、卵胞発育に関わる遺伝子発現について評価した。
結果
卵胞の直径は第1波が大きく、卵胞への血流は、第1ウェーブの方が血流量が多く、発育に伴って増加したものの、第2ウェーブでは大きな増加はなかった。卵胞液中のエストロジェンおよびその元となるアンドロジェンは第1ウェーブの方が多く、LHレセプターの発現量は第1波卵胞が多かった。
まとめ
これらの結果は第1卵胞ウェーブの方が第2ウェーブより活性が高いことを示している。
この結果を見て最初に感じたのは、「だったら第1ウェーブ発育中に黄体退行薬を投与して排卵させればいいんじゃないか」ということでしたが、論文中の考察によると、卵胞発育中のP4濃度が低い場合、続く発情期間中の子宮内のPGF2αが増加してしまうなどして、第1卵胞ウェーブの受胎率は第2ウェーブに劣るそうです。一筋縄ではいかないものですね
個人的には卵胞中の卵子そのものの活性にはウェーブによる違いはないのかなぁと気になりました
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