胎子死の原因
下は胎齢60日の胎子のエコー画像です。
頭があり、脚が4本あり、へその緒があり…一見なんの変哲のない正常な胎子です。
この画像ではわからないですが、実はこの胎子、心臓の拍動が確認できませんでした
胸のあたりでリズミカルに動くものが本来なら確認できるはずですが、それが確認できません。
念のため、1週間後に再度エコーで確認してみると…きれいさっぱり胎子はおろかわずかな胎水すら残っていませんでした
エコーを当てたからわかったようなもので、触診のみでは気づかずに妊娠していると判断していたかもしれません。
しかし、60日くらいまで成長した胎子が煙のように消えてしまう。なんとも不思議で恐ろしい出来事です
さて、最近ですが牛の胎子死の要因に血液凝固系の異常が関与していることが報告されました
【黒毛和種牛における内因系血液凝固異常と胎子死の関連性 緒方ら 日獣会誌67(2014)】
この報告によると、血液凝固因子であるⅨ因子欠乏の牛および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長している牛では正常な牛に比べ胎子死(流産)の頻度が優位に高かったそうです。
その理由については明らかではありませんが、凝固因子の中には線溶系にも影響するものもあり、これらの異常によって血栓が形成され子宮や胎盤の機能が阻害される可能性があるそうです。
ヒトの不育症(習慣性流産)も、このような血栓が原因の1つになるそうです。
先ほどの胎子も途中で血栓が形成されて死んでしまったのかもしれません。直前までは正常な発育をしていたわけですから。流産や胎子死を繰り返す牛がいた場合はAPTTの測定と血栓防止策をとることで繁殖性の改善ができるかもしれませんね
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