受胎する卵としない卵の違い
受胎する卵としない卵の違いはなんだろう。
日々疑問に思うところですが、そこに切り込んだ論文が発表されました。
ついにやってくれた、と少々興奮気味です。
A.M. Zolini et al.,
Molecular fingerprint of female bovine embryos produced in vitro with high competence to establish and maintain pregnancy
Biology of Reproduction, 2020, 102(2), 292–305
何をしたかと言いますと、受精卵を真ん中で真っ二つにします。
一方をウシの子宮へ移植します。
そしてもう一方を使いまして、その受精卵から発現しているRNAの量を全て解析します。
その後、受胎したものとしなかったものでRNAに違いのあったところを比較するということをやっています。
簡単に書きましたが、RNAを全て調べるというのが技術、手前、機材、お金とたくさんのものが必要なので簡単にできるものではありません。これができるのはさすがアメリカ、さすがPJ Hansenです。
さて結果ですが、今回の解析により増えたもの、減ったもの含め617個の違いが見つかったそうです。
遺伝子1つ1つ比較してこれが影響する、すごいと言っていたものが600個です。
もちろん相関の強い因子もありますので、キーとなるものはもっと少ないですが間違いなく受精卵の品質評価は1歩前に進んだと思います。
ざっくり、しかもほんの一部ですが、trophoblastに関する因子が高い方が受胎しているようです。INFT、WBP1、TEAD4などを調べれば簡便な品質評価に使える可能性も出てきました。
あとはこれを基に影響する因子を増やす、減らす培養法を改善する取り組みも加速するでしょう。
今回の知見をもとに受精卵の品質がさらに高まる可能性は高いです。
この機に乗じて我々もさらなる高みを目指して頑張りたいですね!
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