P4投与は小さな胚を救えるか?
最近読んだ論文を一部省略して紹介します。
題:Effect of bovine blastocyst size at embryo transfer on Day 7 on conceptus length on
Day 14: Can supplementary progesterone rescue small embryos?
(和訳:移植時7日目での胚の大きさの14日目での伸長胚への影響:プロジェステロン(以下P4)投与は小さな胚を救えるか?)
著者:O'Hara,ら
ジャーナル:Theriogenology article in press
緒言:妊娠1—2週間後のP4濃度の増加は胚の伸長を刺激し、受胎性を高めるという報告もある。また、AIやETの後のP4除放剤による外的なP4投与やhCGによる外的な黄体機能の増強により、母体のP4濃度が増加するとともに、胚の伸長が促進されるという報告がある。よって本研究ではレシピエントに対する外的なP4投与や黄体機能増強により、移植時に細胞数が少なくサイズが小さいため発育能が低いと考えられる胚の発性能を向上させるのではないかという仮説に基づき実験を行った。
材料と方法:
・材料:交雑肉用種未経産牛33頭
・発情同期化し、発情が来た牛(27頭)にDay7でET(10卵/1頭)、発情Day14でと殺し胚回収
・PRID投与(Day3-5)、hCG投与(Day2)および移植した胚の大きさ(大 or 小)で実験群を設定
(無処置・大、無処置・小、PRID・小、PRID・大)
・胚の細胞数はストロー封入の前に判定。細胞数代表値は大:144.8、小:72.4
・母体血中P4濃度をDay0-14の間毎日測定
結果
・P4濃度:hCG投与区で無処置に対しDay8、PRID投与区で無処置に対しDay4-5で有意に高くなった。
・胚の長さは下表のとおり。
†:無印に比べ大きい傾向あり(P>0.10)
*:無印に比べ有意に大きい(P>0.05)
考察:本研究ではhCGおよびPRIDにより小さな胚の伸長が促進された。PRIDによってかなり伸長が促進されたのは、hCGより急激にP4濃度が上昇したためだと考えられる。外的なプロジェステロンの添加は胚の伸長を促進させるものの、LHパルスを弱め黄体機能を低下させてしまう。一方hCGのような黄体刺激剤を共に投与する黄体機能が維持されるという報告がある。
・・・AIやETに際しP4除法剤・黄体刺激剤を投与するさまざまな方法がありますが、用量・タイミングはさまざまです。ただ単にプロジェステロンをあげてやればいいという単純な話ではなく、胚の発育・黄体機能の維持のバランスが大切であると本論文を読んで感じました。
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