アメリカの繁殖管理
本日十勝青年獣医師会という十勝管内の若手獣医師を中心とした会合の勉強会があり、「牛の繁殖に対する治療困難な状況と現在わかっている解決策」という演題で、アメリカの製薬会社メルクアニマルヘルスのAndrew Skidmore先生からお話を聞かせていただきました
分娩後の無排卵の重要性および対処法、リピートブリーダーについて、繁殖技術のサイクルなど、様々なお話を聞かせていただいたのですが、お話全体を通して、「日本とアメリカの繁殖管理における根底的な考え方の違い」を強く感じました。
日本の酪農における繁殖管理の基本は、「発情をきちんと見つけて、授精する」ことであると思います。発情がこない牛などの問題牛がいた際は、都度現場において獣医師が頭を悩ませ試行錯誤しながらホルモン剤等の処置を行っています。
一方日本よりも規模がはるかに大きいアメリカでは、日本以上に繁殖業務の省力化が前提となります。そのため日本とは異なり、予め設けた生理的空胎期間以内に授精を行うこを前提とし、オブシンク法を用いた定時人工授精を行っているそうです。アメリカでは初回PG投与の14日後で再度PGを投与、その後12-14日目からオブシンクを開始するプレシンク法が一般的に行われているそうですが、この方法であれば、生理的空胎期間を70日と設定した場合、子宮卵巣機能が回復していない可能性も高い分娩後34日目からホルモン剤処置を開始することとなります。
射つ注射の数もかなりの数になるわけですが、「木曜日は授精の日」といったように曜日ごとに作業を統一化して繁殖業務の簡略化を図っているわけです。
頭数規模、薬価等、日本で行ってコスト的には合わないとも考えられます。直にお話を聞くことで、改めてアメリカの酪農の規模の大きさを感じられるいい機会となりました
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