ヒートストレスからの回復
9月ですね。
今年は冷夏という記事もありましたが、十勝はさらに最近めっきり涼しくなってきました。
ヒートストレスは繁殖に悪影響を及ぼすのは皆さんご存知かと思います。
季節的に過ごしやすい秋口は牛の繁殖にうってつけのようにも思えますが、ヒートストレスからの回復はそう簡単ではないことを明らかにした論文をご紹介します(ちょっと古いのですが)
タイトル:Improvement of quality of oocytes collected in the autumn by enhanced removal of impaired follicles from previously heat-stressed cows
(和訳:ヒートストレス感作により傷害を受けた卵胞の積極的な吸引による秋季回収卵母細胞の品質の改善)
出典:Reproduction (2001) 122, 737–744
著者:Rothら(ヘブライ大学)
緒言:
乳牛の繁殖能力は夏季に低下するが、ヒートストレスが消失した秋季であっても低い状態が続く。
本研究は夏季のヒートストレスが遅延して秋季の卵母細胞の品質に及ぼす影響を明らかにするとともに、夏季にヒートストレスを受けた卵胞を積極的に除去することで卵母細胞の品質を改善させることを目的に行った。
材料及び方法:
供試動物:夏季にヒートストレスを受けたホルスタイン種経産牛 16頭
実験方法:秋季に4つの連続した発情周期において、試験区、対照区下記の日程で3-7 mmの卵胞を超音波ガイド下でOPUにより吸引した。発情19日目でPGF2αを投与し、発情21日目でGnRHを投与し、繁殖周期を維持させた。各周期のDay4で回収した卵母細胞を体外受精に供した。
表: 対照区と試験区における4つの連続した発情周期において卵胞を吸引した日程
対照区 |
Day 4 |
試験区 |
Day 4, 7, 11, 15 |
結果:
・高品質胚(グレード1)の割合の増加が試験区(周期2)の方が対照区(周期3)より早かった。
・卵割率は対照区で38-58%であったが、試験区では40-75%であり、周期3,4で有意に高かった (P < 0.05)
・胚盤胞発生率は、試験区では低いままであったが、対照区では周期3、4で有意に増加した(P < 0.05)
・・・というわけでヒートストレスの影響は涼しい秋になってもしぶとく残り続けるようです一方傷ついた卵胞を膿を取り除くように頻繁に吸引することで、卵母細胞の発生能は高まるようですね!
受精卵回収においてもプログラムに入る前段階での卵胞吸引が有効な気がします
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