性選別精液による胚作製
本日も性選別精液の話題です。性選別精液をつかった体外受精に関する論文を紹介します。
原題:Production of female bovine embryos with sex-sorted sperm using intracytoplasmic sperm injection: efficiency and in vitro developmental competence.
Theriogenology:2014,81,675-82
(ICSIを用いた雌胚の作成:体外発育能と効率)
性選別精液はフローサイトメーターと呼ばれる機械により精子を、X精子(メス産仔が生まれるX染色体をもつ精子)かY精子(オス産仔が生まれるY染色体をもつ精子)に分けてつくられます。
この機械にかけることで物理的な傷害をうけることや精子数が少なくなることから受胎率の低下が問題とされています。
効率的にメス産仔作製をする方法はないのでしょうか
この論文ではintracytoplasmic sperm injection(ICSI)卵細胞内精子注入法(卵子に精子を直接注入する方法)を用いて性選別精液によるメス胚作製効率について調べています。
4頭の種雄牛を用いて、性選別精液を用いた体外受精(ssIVF)、通常の精液を用いた体外受精(usIVF)、性選別精液を用いたICSI(ssICSI)、通常の精液を用いたICSI(usICSI)の4区をもうけ前核形成率(PN)、卵割率(cleavage)、胚盤法形成率(BL)を調べました。
結果です。
ssIVFのPN率とcleavage率はusIVF、ssICSI、usICSIと比較すると統計学的に有意差のある低い値を示しました。さらにssICSIのBL率はusICSIと同程度であったことからICSIはフローサイトメーターによりダメージを受けた精子を救済する方法かもしれません。
この実験で出来た胚の性別はssIVFとssICSIでは100%、usIVFとusICSIはそれぞれ58.8%と57.8%でした。
結論として、ICSIは選別精液を用いた胚の作製において代替案になると考えられます。
技術的にも設備的にもICSIは今の畜産現場では難しい技術なのではないでしょうか。
もっと身近な技術になって欲しいものです。
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