技術と倫理
ヒト受精卵の遺伝子を「ゲノム編集」という技術で改変したとする論文を,中国の広州医科大学のチームが
米国生殖医学会誌に発表したそうです
中国のチームによるヒト受精卵ゲノム編集の実施は,昨年4月に続きこれで2例目です。
ゲノム編集とは,遺伝情報の中から特定の遺伝子を指定して,その遺伝子の持つ情報を操作することで,畜産分野においては
すでに増体や疾病予防への応用が実用化の段階に入っています
少し前に話題になった遺伝子組み換えも遺伝情報を編集する技術なのですが,遺伝子組み換えは狙った遺伝子をピンポイントで
編集できないため,ゲノム編集は従来の遺伝子組み換え法よりも,はるかに効率よく遺伝子を変えることができます。
今回の中国のチームは,エイズウイルスが感染するときに利用する細胞表面のたんぱく質を作る遺伝子を,ウイルスに感染しにくくなる
遺伝子と置き換えようとしたとのこと
ヒト受精卵のゲノム編集に関しては,技術的には可能であっても倫理的な問題が多く,意見が分かれるところです
受精卵にゲノム編集を行った場合,改変した遺伝子が次世代に受け継がれる可能性があるからです
(ちなみに中国のチームは子宮に戻しても育たない異常な受精卵を使用し,培養した受精卵は全て破棄したそうです)
いつかこの技術が承認され,ヒトでも自由にゲノム編集が行われる日が来るのでしょうか…
私自身,研究にたずさわる身として,技術の進歩を詰めていきたい気持ちが理解できないわけではありません。
また畜産分野では,ゲノム編集は育種改良や生産性の向上において大きな期待がかかっている技術でもあります。
いずれにせよ,どんどん進歩していく技術に倫理の議論が置いて行かれぬよう,しっかりとアンテナを張り,自分の頭で考える
必要がありそうですね
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