和牛の双子生産② ~2卵移植の移植方法と受胎成績~
和牛の双子生産、第2回目の今回は、2卵移植の移植方法と受胎成績をご紹介します
○受精卵の準備
・1本のストローに1個の受精卵が入っているため、2本のストローを準備します。なお、2個の受精卵の血統は、全く同じものにする必要があります
○移植方法(片側子宮角vs両側子宮角)
・基本的な事ですが、受精卵は黄体が存在する側の子宮角へ移植します
・そのため、2卵移植の場合も黄体存在側の子宮角へ移植するのが良いと考えられます
・しかし、片側の子宮角へ受精卵を2個移植した場合、流産や難産の懸念がありました
・そこで本試験では、受精卵を片側の子宮角へ2個移植した場合(片側区)と、両側の子宮角へ2個移植した場合(両側区)とに分け、受胎率を比較しました
・なお、両側の子宮角へ2卵移植する場合は移植器を2本用意し、左右1回ずつ挿入する必要があります
・一方、片側の子宮角へ2卵移植する場合は(コツが必要ですが)1本の移植器に2個の受精卵をセットし、挿入を1回で済ませることができます
・供試牛は黒毛和種繁殖牛71頭(平均産次6.3)とし、延べ97回の移植を行いました
○結果
・受胎率は両区とも約60%と変わらなかったものの、双子率を比較すると、片側区の方が高くなりました(片側区42.6%vs両側区32.0%)
・この結果から、2卵移植は黄体が存在する片側の子宮角に実施した方が、双子率を高めることができます。やはり、両側区の場合、黄体が存在していない側に移植した受精卵が受胎しにくかったものと考えられます
・片側子宮角への2卵移植は双子受胎率以外にも、移植者とすれば挿入が1回で済むので作業的にも楽ですし、牛にとっても拘束時間が短くなりストレスが軽減できるといったメリットが考えられます
・なお、流産は両区ともほとんど無く、差は見られませんでした。一方で、ホルスタイン種では(自然発生した双子の例ですが)、片側子宮角に双子が発生した場合、両側子宮角の双子よりも流産率が高まるという報告もありますので、流産に関しては品種の違いがあるかもしれません
・なお、通常のエコーによる妊娠鑑定で、双子の確認も可能です。画面中央の胎子の左側に、2頭目の胎子がぼんやり見えています
次回は、双子受胎牛の妊娠末期の栄養管理に関する試験結果をご紹介します
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