和牛の双子生産① ~素牛不足の解消を~
今はET研究所に所属している私ですが、今年の3月までは同じ全農内のエサの研究所に所属しており、牛の飼養管理や飼料の開発に関する研究をしていました。
その中でも、双子生産の研究を継続して行っておりました。
双子は難産や流死産の発生が問題になるだけでなく、場合によっては親牛への影響も出ることがあり、簡単な技術ではありません。
そこで、今回から(長くなりそうなので…)数回に分けて、試験の内容を紹介させていただこうと思います。
実際にやっているけどなかなかうまくいかない、または、興味はあるけど手が出せない、といった方々にとっての解決策が、記事の中に含まれていれば幸いです。
※なお、この双子生産の内容は『2014年全農畜産シンポジウム』で発表、『ちくさんクラブ90号』で掲載しております。
まず、和牛の双子生産を取り組んだきっかけですが、和牛素牛の頭数が減少し、価格が高騰の一途をたどる中で、繁殖農家で双子生産が可能になれば和牛素牛の頭数が増え、価格も安定させられないだろうか、と考えたのが始まりでした。
※素牛取引価格は農畜産業振興機構・肉用子牛取引情報を、和牛繁殖農家戸数は農林水産省・畜産統計を、それぞれ抜粋
通常のAIでも双子発生率が高いホルスタイン(ホルスタイン5~10%、和牛1%未満)では双子分娩の際、
・妊娠期間の短縮により妊娠末期の栄養管理が適切に行なわれない
・周産期疾病増加
・乳量低下
・子牛の生時体重の低下
・難産
などの問題が発生することが多いです。
和牛においては例数も少なく不明確な点が多いですが、ホルスタインのように乳腺の発達や泌乳にエネルギー使われることもないので、成績が安定するのではないかと予想しました。
そこで私が行った研究では、和牛を供試し、ET時に受精卵を2卵移植して人為的に双子受胎牛を作り出し、分娩前の栄養給与水準が分娩成績に及ぼす影響を中心に調査し、双子生産技術の確立を目指しました。
次回から、試験の結果を紹介させていただきます。
なお、次回は2つの受精卵を移植する際の移植方法と受胎成績の結果をご紹介します。
コメント