タンパク質をお掃除!
ある遺伝子の働きを調べるためにその遺伝子を機能しない状態にして観察することを「逆遺伝学」なんて呼んだりしますが、最近ではこちらの方が主流のような気もしますね。
遺伝子を働かなくさせる方法はそれはまあ色々とあるわけですが、一番強力なのは遺伝子ノックアウトでしょうか。これは遺伝子のコードされているDNAそのものを壊すので当然最も顕著に効果が現れます。ただ、これはDNAそのものを変えるので結構大変です。(ゲノム編集技術によってだいぶ簡単になったようですが)
遺伝子が働く場合は概ねDNA→RNA→タンパク質 という経路をたどるので、RNAを標的にすることでも遺伝子の働きを抑えることができます。これはRNA干渉という方法が有名ですね。
これは細胞にRNAを導入すればできるので、ノックアウトよりも頻繁に行われている気がします。ただタンパク質のターンオーバーが遅い(寿命が長い)場合は効果がでるまでに時間がかかるので、受精卵のように時々刻々と状態が変化するものには向かないんじゃないかなーと個人的には思っています。
そんな時に役に立つのがタンパク質を直接的にターゲットにする方法ですね。
阻害剤添加がポピュラーかと思いますが、これは「この薬が働きを阻害しているのって本当に目的のタンパク質だけかい?」という疑問が永遠に付きまとうし、阻害剤がないとそもそも行えません。
そんな時に役に立つかもしれないのが、今日紹介する「Trim-away」という方法です。
Trim21というタンパク質と抗体を細胞に導入してやると、Trim21は抗体が結合した抗原をまるごと分解に導いてくれます。そこで機能させたくないタンパク質に結合する抗体を入れてやれば、それが分解されることになります。(文字よりリンク先の図を見た方がわかりやすい気がします)
つまり、実験する側は抗体さえ変えれば目的のタンパク質の働きを抑えられるんですね~。抗体って高いけど・・・。
しかもタイトルに「acute and rapid」とあるようにかなり効くのが早く、入れて数十分でも効果が見られるようです。
これなら「受精卵の2細胞期に働くタンパク質を抑えたい!」というような注文にもこたえられそうですね。
また抗体は一般的には阻害剤よりも特異性が高いと考えられるので、その点でも安心ですね。
この技術を用いた研究が卵子や受精卵で段々と行われているようなので、そこら辺もチェックしておきたいですね!!
TKH
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