子宮修復と受胎率
牛の繁殖分野において、一年一産が農家経営の目標になっていますが、分娩後の卵巣機能の回復や子宮修復の遅延により、この目標達成は大きな課題となっていると思います
最近読んだ文献で、面白い記事があったので、参考程度に読んでいただけると幸いです
「分娩後早期のPRIDの膣内挿入が黒毛和種牛の子宮修復と受胎率に及ぼす影響」
目的
分娩後早期の黒毛和種牛に卵巣賦活処置としてPRIDによる発情同期化と定時AIが、発情回帰や受胎律に及ぼす影響について検討した。
材料および方法
正常に分娩した2産以上の黒毛和種牛を使用。
分娩後29.5±2.3日をDay0とした。Day0で黄体がある牛にはPGF2αの投与、黄体がない牛にはGnRHを投与した。Day7でPRIDを挿入し、9日後のDay16に除去、同時にPGF2αを投与した。
PRID除去後24時間にE2を1mg、または48時間にコンサルタン(GnRH)と投与し、PRID除去後56時間に定時AIを行った。
その後、Day28(定時AI後10日)に黄体確認、Day49(同31日)でエコーにより早期妊娠診断を行った。
結果
Day0にGnRHか、PGF2αを投与すると、Day7で卵巣に機能的黄体のある牛が増加し、血中プロジェステロン濃度もDay0と比較して有意に上昇した。
また定時AIの受胎率は、Day7に黄体が無い牛よりもある牛で高い傾向にあった。
また、Day0からDay28にかけて左右子宮角の長さは有意に短くなり、同時に外子宮口の細菌数も減少する傾向にあった
結論として、分娩後早期からの卵巣賦活とPRID処置は子宮修復を促し、受胎率の向上に寄与することが示されました。
結果としては、まあ期待した通りの結果だなという印象は受けますが、もしこれらのちょっとした処置で子宮修復が早まれば、一年一産の目標クリアも夢ではないのかもしれませんね
だけど思い通りにいかないのも、動物の繁殖生理学の難しさだと私は思います
上村先生の研究ですよね。私はフレッシュチェックは分娩後28日をめどに実施しています。膣鏡で膣粘液スコア(Williams et al.,2005)をとって、卵巣に黄体所見があればPG、なければ、抗生剤の子宮内投薬や後日再検にしています。フレッシュの時期のPG投与は子宮の自浄作用を促す、ということが文献から分かりますね!黄体所見のない牛の子宮内膜炎治療は頭を悩ませてしまいますが、治療的な意味で定時人工授精処置をするのもありなのですね。まぁ子宮洗浄が一番なのでしょうけれど…。子宮内膜炎の臨床診断がもっと容易にできるようになるとよいですね。
投稿: 福岡 オオカワ | 2013年10月22日 (火) 20:13
オオカワ様
コメント、ありがとうございます。確かに子宮内膜炎の牛に対しては子宮洗浄がベストだと思います。
黄体所見のない牛の内膜炎治療には、GnRHを打って次の黄体を作ってからPGF2αで退行させる方向にしていくのかどうか、今議論されているようですね。
九州の三学会はいかがでしたか?面白い研究発表がありましたら、教えていただけると幸いです。北海道も明日から二日間、全道の人工授精師大会があります。ET研からも参加しますので、面白い研究発表がありましたら随時ブログに載せていけたらと思います。
投稿: tomi | 2013年10月23日 (水) 16:01
三学会、私も乳房炎に関する研究発表をし、見事に玉砕してきました(._.)九州地区では繁殖や乳房炎などに関するものは少ないですね。大きいNOSAI組織の診療所がMPTなどをして繁殖成績の改善などを発表されているのが増えてきましたね。臨床しながらデータを集めて統計学的にしっかり評価することが大事なのでしょうけど、難しいもんです。繁殖関連でフィールドでできそうな仕事があれば、教えてください!
投稿: 福岡 オオカワ | 2013年10月24日 (木) 13:12