黄体の成長
岡山大学の環境生命科学研究室の奥田潔教授らの研究グループは、卵巣中の黄体が、細胞の肥大のみではなく、細胞の増殖によっても成長することを、去年の12月に世界で初めて発表しました
ウシの人工授精では、ホルモン製剤の投与で排卵の時期を制御していますが、黄体の成長期には効果が見られないため、成長期が過ぎるのを待つ必要があり人工授精の効率が低いことが問題となっています
今回の研究で、黄体細胞の増殖が確認されたのは、活発な成長段階にある黄体のみであり、その後の黄体の成熟期においては増殖する黄体細胞は確認されていませんでした。
また、成長期および成熟期の黄体細胞における細胞周期調節遺伝子発現を調べた結果、細胞周期の進行の促進に重要な役割を果たすタンパク質「サイクリン」(細胞において細胞周期を移行させるためのエンジンとして働くタンパク質のこと。 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と結合して働く)が成長期に高い発現を示すこと、一方細胞周期の進行を阻害するタンパク質群「Cip/Kip ファミリー」(サイクリン-CDK 複合体に結合してその活性を抑制するタンパク質群のこと)の発現が成熟期に高い発現を示すことを明らかにしました
今回の成果は、黄体の成長期における黄体細胞の増殖と黄体形成過程のメカニズムを明らかにしたものであり、今後これらのメカニズムを詳細に調べることにより、成長期にある黄体機能を人為的に制御することが可能となり、人工授精効率の向上に大きく貢献することが期待されます
発表論文: Yoshioka S, Abe N, Sakumoto R, Okuda K. Proliferation of luteal steroidogenic cells in cattle. PLoS One, 2013, 8(12);
(doi: 10.1371/journal.pone.0084186)
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