CIDRによる受胎率向上
授精後早期に不受胎牛を発見する目的で、授精後14日目からCIDRを7日間挿入する、ファストバック○Rプログラム(FBP)という方法があります。
CIDR抜去後、不受胎牛は発情が観察されますが、受胎牛では何も起こりません。FBPは早期に受胎の有無を判定し無駄な空胎期間を可能な限り短くする方法として、活用されています。
しかし、FBPを行った牛で受胎率が良い傾向にあるということが分かり、AI後のP4感作が受胎率にプラスに働いているのではないか?ということで、最近、FBPの変法であるモディファイトファストバック○Rプログラム(MFBP)が開発されました。
この方法は、授精後早期の血中P4濃度の速やかな上昇による受胎率向上を目的としています。
原理は
① 授精後5日目にCIDR処置を開始することで、血中P4濃度の速やかな上昇を補助し、子宮環境を整え、受精卵の発育を促す。
② 不受胎の場合は黄体退行が起こるが、授精後19日目までCIDR挿入により血中P4濃度が維持されることで卵胞の成熟は抑制され、CIDR抜去によって卵胞が成熟することで抜去後に発情が集中する。
実際に帯広畜産大学の松井先生らが行った試験では、MFBP処置群ではCIDR抜去時に発情回帰の明らかな集中化が見られ、分娩後150日以上経過した個体へのAI後のMFBP処置は有意に受胎率を増加させたという報告を行っています。
長期不受胎牛あるいは“リピートブリーダー”牛において、MFBPを試してみるのもいいかもですね。
引用文献:臨床獣医 2013.Aug. Vol.31, No.8
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