FTAIにおけるPGによる排卵誘起
牛の繁殖に携わっている方なら、プロスタグランジンF2α(PG)はご存知かと思います。
PGといば黄体退行を引き起こし、発情を引き起こすことを主目的に用いられていますが、近年、PGの投与により排卵が引き起こされることを示す報告がなされており、ET研ニュースでも紹介されております(2012年11月号)。この報告は春季発動前の未経産牛へのPG投与により、初回排卵が早まったというものであり、さらなる臨床応用はできないか興味深いところですが、今年PGによる排卵誘起を定時人工授精 (FTAI) に組み込めないか検討した報告が出ましたのでご紹介したします
原著:The use of PGF2α as ovulatory stimulus for timed artificial insemination in cattle.
(和訳:牛の定時人工授精におけるPGF2αの排卵誘起剤としての使用)
出典:Theriogenology. 2014 Mar 15;81(5):689-95
著者:Pfeiferら
この文献では、Day0安息香酸エストラジオール 1mg (EB)+ CIDR 9 Day + Day 9 PG 0.5 mg のプログラムにおいて、Day 10に排卵誘起剤としてEB 1mg を投与するか、PG 0.5 mgを投与するかによる比較を行っています。
未経産牛の場合も経産牛の場合も、排卵率、受胎率ともに有意差はなく、エストロジェン製剤と同程度の成績を、PGでも見込めることが示唆されます(下表参照)。
有意差なし
PGの排卵誘起作用がFTAIでも有効であることが示されております。PGにより、下垂体に対するGnRHの作用が強まり、LHの放出が増強されるとともに、排卵前の卵胞にも直接作用している可能性があるとも考えられているようです。
FTAIのコスト削減や、他剤との併用による効率向上など、さらなる応用が期待されますね
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