同期化と黄体と持続性P4
本日も2015IETSの発表の中から、現場に応用できそうなものをご紹介いたします。
原題:FERTILITY RESPONSE IN SUCKLED BEEF COWS SUPPLEMENTED WITH LONG-ACTING PROGESTERONE AFTER TIMED ARTIFICIAL INSEMINATION
(和訳: 定時人工処置後に持続性黄体ホルモン製剤投与を行った泌乳期肉用牛の受胎性)
著者: G. Pugliesiら (サンパウロ大学)
緒言: 黄体とプロジェステロン(P4)分泌は主席卵胞のサイズに影響を受け、発情後早期のP4増加は胚発育を向上させる。一方、主席卵胞サイズと発情後早期のP4添加の受胎性への影響はよく分かっていない。そこで、(1)卵胞発育期における黄体の存在が、主席卵胞と黄体のサイズと排卵率に及ぼす影響、(2)主席卵胞サイズと持続性黄体ホルモン製剤の添加が定時人工授精(FTAI)における受胎率に及ぼす影響について評価を行った。
材料および方法
・10日間隔で超音波診断器における生殖器検査を行い、無発情牛と正常牛に分け、無発情牛は試験1、正常牛は試験2を実施した。妊娠鑑定はDay31-36に超音波診断器により行った。
結果
試験1:無発情牛におけるFTAIの受胎率は持続性P4を投与した区の方が有意に高かった(下表参照)
*: P < 0.05 †:P < 0.08
試験2: 主席卵胞サイズはPG投与区が多く、排卵率、黄体面積はPG投与区の方が大きかった。(下表参照)
*: P < 0.007
受胎率は、PGを投与せず、持続性P4を投与しなかった区が、PGを投与した区より低くなった(下表参照)。
a,b: P < 0.05
結論:発情後4日目における持続性P4製剤投与は無発情牛の受胎性を増加させる。一方、卵胞発育期における機能性黄体の存在は主席卵胞サイズを小さくし、排卵率、受胎率を減少させる。
・・・発情後5日目でP4徐放剤を挿入するファストバックは当ブログでも何度か紹介しておりますが、今回はワンショットの注射薬である持続性P4製剤を用いた手法でした。P4徐放剤と比較した場合どうなるのかも気になるところです。
同期化開始時の黄体の存在は生理的なP4濃度の上昇による受胎率の向上を引き起こすことも考えられますが、今回は受胎率を下げる要因となっています。高泌乳牛ではまた違う結果となるかもしれないなぁと感じました
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