腎臓に続いて心臓も
少し前にブタの腎臓をヒトに移植することに成功したという記事を本ブログでも紹介しましたが 、
今回はなななんと心臓の移植までやってしまったようです。
しかも何がすごいって、以前の腎臓移植では脳死状態の男性の太ももの血管にブタの腎臓をつないで正常に動くか観察したそうですが、今回は心臓に疾患を持った男性に対して行ってしかも術後は順調、エクモまで外すことができたそうです。
いやー、にわかには信じがたいですが・・・ とんでもない進歩ですね。
以前のブログに移植の前段階の研究で「複数のブタレトロウイルス遺伝子を働かなくした」って書いていましたが、僕自身もレトロウイルスと移植にどんな関係があるんだいと思って調べてみました。
まず異種間移植で問題になるのがブタの細胞にある抗原をヒトの抗体が認識しちゃう問題。
特に炭水化物構造に対するαGal, Neu5GC, SDaの三つの抗原が悪さをするらしく、この3つの抗原が発現しないようにゲノム編集が行われているみたいです(今回移植されたブタ心臓はUnited Therapeuticsという企業が開発したようなので、どの遺伝子が働かなくなっているかまでは少し調べただけではわかりませんでした)。
そしてもう一つが内在性レトロウイルス。内在性レトロウイルスについては以前にもちらっと書きましたが、ざっくりいうと大昔に感染したと思われるウイルスの遺伝子(の一部)がそのまま感染した細胞のDNAに組み込まれて、それがなが~い時間をかけて私たち動物のDNAに保存されてきたものです。一部の内在性レトロウイルスは遺伝子として私たちの細胞で機能を持って働いてくれていたりします。
そして、その内在性レトロウイルスの中にはウイルスとしての遺伝子が完全に残っているものもあるため、そういうやつは私たちの細胞の中でウイルスそのものが作られているみたいです。おったまげですね。
で、話を戻すとブタの臓器をヒトに臓器移植したときにウイルスに感染する(ブタ臓器の細胞で作られたウイルスが放出され、ほかの"ヒト"の組織に感染しちゃう)可能性があるようです。ブタの内在性レトロウイルスはブタとともにながーーい年月を共にしてきたので悪さをすることはないんでしょうけど、人の場合だと悪さをしちゃうかも・・・ということみたいです。
それで「移植のために複数のブタレトロウイルス遺伝子を働かなくした」という経緯にいきつくわけでした。
異種間臓器移植が当たり前の時代がもうすぐそこに、という感じですね
TKH
コメント