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2021年1月21日 (木)

動物はウイルスで進化する!?

私たち生き物は長い年月をかけて進化してきた結果、今日では非常に多様な種に分かれていますね。

生き物の進化は生きている環境に適応できる個体が選抜されることで起こるというのが定説ですが、自分自身の力だけではなく他の生き物の力によって進化した部分もあるといわれているのはご存じでしょうか。

例えば私たちの細胞の中でエネルギーを作ってくれるミトコンドリアという器官は、ある細菌が細胞の中に取り込まれたのが由来だといわれています。

そしてこのような細菌だけでなく、ウイルスによっても私たちは進化してきたと考えられています。
私たちのゲノム配列の中には、ウイルスが持っている配列と非常に近いものが多くあり、その一部は実際に遺伝子として発現し、機能しています。

これはレトロウイルスと呼ばれる、感染した細胞のDNAに自分のもつ配列を埋め込んでしまうウイルスにかつて感染したことが原因と考えられています。有名なウイルス由来の遺伝子でいうと、シンシチンと呼ばれる遺伝子は胎盤が形成される際に細胞が融合するために必要であるといわれています。

また、マウスでみられるウイルス由来の配列ではMuERV-Lというものがあり、これは受精後24時間程度の2細胞期の胚で発現し、胚から遺伝子発現が開始される(胚ゲノム活性化といいます)ために必要と考えられています。

さらにこのMuERV-Lが発現しているES細胞を電子顕微鏡で観察すると、ウイルスの殻のような構造が観察されたそうです。

私たちET研究所になじみ深いウシでも、BERV-Kというウイルス配列が見つかっており、胚盤胞になる前の受精卵の段階や、その後の胎盤が作られる際に発現するようですが、その具体的な役割まではまだわかっていません。

Bovine trophoblastic cell differentiation and binucleation involves enhanced endogenous retrovirus element expression
Katsuo K et al.,Reprod Biol Endocrinol 2012

Expression of endogenous retroviruses in pre-implantation stages of bovine embryo
Khazaee E et al.,Reprod Domest Anim 2018

このようにウシにおいてもウイルス配列と繁殖は密接な関係にあります。
生き物にとって最も大事な「生まれる」仕組みがウイルスによって進化するなんて、ちょっぴり意外な気がしますね。

TKH

コメント

毎回勉強になります。コロナで大変ですが、ウィルスと共存していくために必要な知識となりました。ありがとうございました。

ET研ブログを見ていただきありがとうございます!

ウイルスと聞くと新型コロナウイルスのように恐ろしいものしかないと思ってしまいますが、このように違う側面もあるんですね。

ちなみにウイルスは、実験科学においても細胞に特定の遺伝子を発現させるために広く使われています。

例えばノーベル賞を受賞したiPS細胞も、通常の細胞をiPS細胞に変化させるためにウイルスを使って4つの遺伝子を発現させることで作られました。

今はウイルス感染の対策が必須の世の中ですが、利用できるウイルスは利用していきたいですね。

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