夜食うと昼に産む?
「昼間分娩誘起ってなんで起こるんですか?」と後輩に尋ねられ、返答に窮してしまったので、少し勉強してみました。
昼間分娩誘起術とは、文字通り、分娩管理・新生子管理をラクにするために分娩を昼に引き起こす技術であり、方法は「分娩の2週間前から夜間のみ給餌し、翌朝全て残餌を除く」というものです。
思わず「ホントかよ」といってしまいそうですが、実際に80%以上の昼間分娩率を達成している報告がいくつもありました
一体、どんなメカニズムで起こるのか気になるところですが、過去に検討した報告が一報見つかりました。
(日畜会報, 69(2):133-139, 1998 田中義信ら 酪農学園大学獣医学部)
この報告においては、夜間給餌群の昼間分娩達成率は64.3%であったのに対し、通常給餌群では51.9%であり、有意差は見られなかったそうです。一方で、妊娠後期に胎児の体重と共に増加し、分娩発来機構の起点である胎子副腎からのコルチゾールの分泌を促進しるPGE2の血漿濃度は、夜間給餌群においてのみ、夕方のPGE2濃度は増加しなかったそうです。
つまり、
朝の節食制限→夕方のPGE2濃度増加抑制→朝のPGE2濃度上昇→朝のコルチゾール分泌増加→昼間分娩
という流れで誘起されているのではないかと考察されておりました。
この他、節食の分娩前の体温変化や性ステロイドホルモンの合成への影響も気になるところです
ET研に勤めていると牛の分娩に立ち会うことはあまりないのですが、久々に学生時代に分娩前の朝夕、直腸温を計って、分娩間近になるとモニターで監視し、いざとなったら介助に農場に向かっていた思い出がフラッシュバックしました
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