和牛の双子生産③ ~双子受胎牛の妊娠末期の栄養管理~
和牛の双子生産、第3回目の今回は、双子受胎牛の妊娠末期の栄養管理の考え方・試験内容をご紹介します。
◎妊娠末期の栄養管理
・繁殖母牛は太らせないことが基本ですので、分娩予定日の約2ヶ月前までは母牛を維持させる程度のエサの給与量で十分です。
・一方、分娩予定日の約2ヶ月前である妊娠末期に差し掛かると、胎子が急激に成長にするため、胎子の成長に見合った栄養分を給与する必要があります。『増飼』とも言われます。
・双子生産においては、この増飼がポイントになります。双子受胎牛のお腹には当然、2頭の胎子がいますので、2頭の胎子に見合った『増飼』をしなければなりません。
・必要な栄養給与量は「日本飼養標準・肉用牛」を参考にし、母牛の維持栄養量に胎子2頭分の栄養量を加えました。
「日本飼養標準・肉用牛」
http://jlia.lin.gr.jp/cali/info/standart/nikuusi.html
・なお、実際の給与量は母牛の体重、給与する配合飼料や粗飼料の成分値などによって変わってきますので、今回は配合飼料給与量の他に、日本飼養標準で設定されている栄養給与量を基にし『充足率〇%』という形で表します。
◎試験区の設定
〇一定区
・日本飼養標準の充足率が100%となるように、分娩予定日の約2ヶ月前から配合飼料を3kgに増飼し、分娩まで一定量の給与としました。
〇増給区
・当研究所の一般管理の中で、分娩予定日の3週間前からタンパク充足率が130%となるように、2段階の増飼を行うことで分娩成績が安定した事例がありました。
・そのため、増給区では分娩予定日の約2ヶ月前から配合飼料を3kgに増飼(充足率100%)、3週間前から配合飼料を6kgにさらに増飼しました(充足率130%)。
〇急増区
・増給区のような2段階の増飼を行おうとすると、分娩予定日の約2ヶ月前から給与量を変更するために別飼しなければならないですが、牛舎構造を考えると2段階の増飼は難しい、という農場を想定し、それでも最後の増飼だけはやってもらおう、と考えた区です。
・分娩予定日の3週間前までは配合飼料が1kgなので維持期と同等の管理です(充足率85%)。そして、分娩予定日の3週間前から増給区と同じく、配合飼料を6kgに増飼しました(充足率130%)。
〇単子区
・2卵移植を行いましたが、残念ながら単子のみの受胎だった牛は、単子区としました。
〇各試験区の配合飼料給与量と充足率を、以下の図に示します。
次回は、各試験区の分娩成績をご紹介します。
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