ET研究所では自前の牛や生産者の方からお預かりした牛への移植を日々の業務として行っています。
移植を行った牛はその後、妊娠鑑定を行い市場に出荷もしくは生産者のもとへ帰っていきます
昨年度は研究所 本場内で、のべ2000頭弱の牛に移植を行いましたので妊娠鑑定もそれと同程度の頭数行いました(残念ながら発情回帰する牛もいるので少し減りますが)
ET研究所では移植から約23日(前の発情から30日)、53日後(発情から60日)そして出荷の直前に妊娠鑑定を行っていますので、その回数は合計すると…。なかなかの仕事量です
ちなみに30日の鑑定はすべての牛で超音波画像診断装置(エコー)を用いています。
上の画像はエコーでの妊娠鑑定画像です。中央の黒い部分に浮かんだ白い物体が牛の胎子になります。まだ胎齢30日ですので牛の形ではありませんが、頭が下にあって胴体があって。移植は大成功だったようです
しかし油断はできません。60日、出荷前の鑑定で胎子がいなくなっていることも実はあります
30日の鑑定のときに胎子がいなくなることが予想できることもありますので、そのうち胎子がいなくなる予兆の画像も紹介したいと思います。
先月、京都大学の研究チームが
長期保存したラットのフリーズドライ精子を人工的に卵子と受精させ、
子を誕生させることに成功したというニュースを見ました
フリーズドライとは、カップめんなどのインスタント食品に用いられている方法で、
急速冷凍して真空状態で乾燥させる技術です
これまでもフリーズドライ精子の報告はありましたが、
今回の報告ですと室温で3ヶ月、冷蔵庫だと5年間保存可能とのことで、
この技術が牛精液で実用化されれば液体窒素の補充といった作業が無くなるし
運搬も楽になって非常にいいなと思います
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0035043
写真はET研究所の供卵牛たちです
先週から放牧が始まりました
青草食べて、また受精卵をたくさん生産してください
最近、酪農家さんより受精卵の雌雄判別(性判別)のご依頼を多数いただきます。
誠にありがとうございます!
性判別は受精卵にダメージを与えないよう、できるだけ少ない細胞を切り取り、
その少量の細胞の遺伝子検査を行うことで雌雄を判定します。
今回、数年前から昨日までに性判別を行った受精卵の性比を調べてみました。
1,937個のうち・・・・・・・・・・・・・・雌が911個
すなわち、雌率47%です。
フィッシャーの原理で知られる通り、多くの生物の性比は1:1に安定しています。
不思議ですね。
もちろん、日によってどちらかに大きく偏る時もありますが、
トータルを計算するとご覧の通り約1:1。
(ヒトは男:女=105:100と言われています。個人的には牛も雄が少々多いと思います)
この性比をコントロールすることに世界中の多くの研究者が挑むわけです。
最もよく聞く膣内のpH(アルカリ性、酸性)にはじまり、女性の社会的順位、栄養、
疾病、ホルモンバランス、ストレス、年齢、季節などなど。
膣内pHの話は、ドイツのお医者様が性交前に女性の膣を薄い重曹溶液(アルカリ性)で洗浄したところ、
その後生まれた53例がすべて男の子だったというセンセーショナルな結果で大流行しました。
しかしながら、上述したいずれの説にも賛否両論あり、
性比コントロールに至っていないのが現状です。
もちろん我々ET研も性比コントロールにチャレンジしましたが・・・・・、非常に難しい。
その中でも、偶然得られた結果を今日はご紹介したいと思います。
ある実験で、過剰排卵処置後の排卵のタイミングを超音波装置を用いて3~4時間間隔で観察していました。
約2日間、観察を続けました。
観察時期は1~2月・・・・、観察場所はもちろん北海道・・・・。
それは地獄のような日々でした・・・・。
卵巣の観察を終え、数日後に受精卵を回収し採卵結果を記録。
ついでに性判別も行い雌率を確認すると、
「うん?」
卵巣観察を行っていない牛群の雌率より少々高い結果が。
例数を増やすため意を決して追試を行うことにしました。
待っていたのはあの地獄のような、いや、地獄の日々です・・・・。
何とか観察を終了し、データ整理すると対照群(発情期に卵巣観察を行っていない牛群)の雌率
51%(41/80)に対して、実験群(卵巣観察を行った群)は66%(61/92)と7割近くの受精卵が雌と判定されました。
「ここで実験群・対照群の説明」
実験群:卵巣を超音波で観察するため3~4時間毎に捕獲し、直腸検査を行います。
対照群:卵巣を観察しないため捕獲しない=直腸検査も行わない。
これらの結果と過去行われてきた研究を照らし合わせ、
雌牛に対する軽度のストレスが受精卵の性比に影響を与えるのではないかと推察し、
何とか簡易的な処置で卵巣観察を行った時と類似した体内環境を作り出すことに専念しましたが、
現在もその方法を見出すことはできていません。
海外でも本試験の追試が行われ、雌の受精卵が多くなりそうだということが報告されました。
大きく視点をかえる時期に差し掛かっているかもしれません(発情期の生殖器に対する連続刺激とか?)。
今後も我々は農家さんの生産効率を改善するための研究を行ってまいります。
どうぞよろしくお願いします
ET研ではチルド保存(4℃)した受精卵の配送も行っております
チルド保存した受精卵は液体窒素が必要ないので空輸が可能です
今日は九州から9胚注文がありましたが、空輸であれば今日中に福岡空港へひとっ飛びです
そして明日移植という感じになっております。
以前の記事(新ETシステム@徳島!)にも書きましたが、受胎率も良好です
ということで、今日はチルド受精卵の配送のため帯広空港まで行ってきました
今日はすごく天気が良かったですよぉ~
ふと温度計を見ると20℃でした
お昼に大好きなおそばをいただきました。
ごぼう天ざるです
ボリュームありすぎてお盆の意味がないんですけどぉー(笑)
コシの強いそばでとぉーってもおいしかったです