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採卵 Feed

2016年2月 5日 (金)

受精卵生産を支える棒たち

 

こんにちは,最近ウシの子宮頸管のことばかり考えている新人獣医師ですsmile

  

先週の記事に,「子宮頸管に物を通す」ことがウシ繁殖の醍醐味だとありましたが,ET研究所では受精卵生産のために,

様々な棒を子宮頸管に通しています。

というわけで本日は,子宮頸管を通すための「棒コレクション」をshineshineshine

20160205_4

上から順に…

拡張棒: 採卵や受精卵移植の前に固く閉じた子宮頸管を広げる。固く,しっかりしているため初心者の練習に最適。難易度★

薬注棒: 採卵後,子宮にイソジン等の薬剤を注入するために使用。難易度★

サイトブラシ: 子宮内膜炎の診断に利用。2016年1月22日の記事参照。難易度★★

バルーンカテーテル: 採卵におけるメインの武器。子宮角先端に導入し,還流液を流し込んで受精卵を回収。難易度★★★

ストロー注入器: おそらく一番有名。精液ストローを装着して人工授精。難易度★?(筆者未経験)

 

といったラインナップとなっておりますhappy02

その他には,受精卵移植に用いるYTガン(下図)もET研の業務に欠かせない存在ですsign03

Yt

 

このように様々な棒たちが,ET研究所だけでなく,世界中の受精卵生産を支えているのです。

私も早くこれらの武器を使いこなせるよう,特訓あるのみですrock

2015年12月10日 (木)

ドナーの一休み

今年度の最終採卵は、12月25日、クリスマスですxmas

 当研究所のプログラムだと、基本的には採卵日の13-12日目に注射の打ち始めとなるため、自然発情を利用して過剰排卵プログラムに導入する牛は、注射打ち始め数日前に黄体の確認を行います。

 本日で、今年度採卵分のドナーの黄体確認が終了しました。この年末年始前の期間は、日々受精卵を生産しているドナーたちにとっても最長の休みとなります。

 因みに、年明け1回目の採卵は新年1月12日であり、発情同期化により過剰排卵プログラムに入る牛の場合、同期化開始日は12月25日となります。今年度最後の採卵日に、来年度最初の採卵プログラムが始まるということです。つまり、ET研究所の黒毛和種ドナーが過剰排卵-受精卵回収のプログラムに1頭も入っていない日は存在しないということですねeye改めて考えてみるとすごいことだなと思います。

 

2015年8月27日 (木)

過剰排卵処置の負担を減らすには?

 受精卵回収を効率よく行う上では、過剰排卵処理は欠かせないわけですが、その実態は、数日間にわたって朝夕注射を打ち続ける漸減投与と呼ばれる地道な作業です。

 当研究所で昨年度行った受精卵回収は、3114頭であり、全ての牛に対して3日間×朝夕2回の投与を実施したとすると、年間投与するFSHの注射回数は実に18684本に上ります。

 イチローのメジャー通産打席を一年で軽く越えてしまう勢いですthunder

 過去、当研究所でも

・ポリビニルピロリドン(粘稠性がある)に溶解する方法 (Takedomi et al. 1995 Theriogenology. 43: 1259-1268)

・尾椎硬膜外腔(ET時や胚回収時の麻酔薬の投与部位)への投与(小西ら、2009、東日本家畜受精卵移植技術研究会)

といった報告をしております。

 他にも水酸化アルミニウムゲルに溶かした方法や、皮下注射などの報告がありますが、要は、

①ドロドロの液体に溶かし込む

②吸収速度が遅い部位に注射する

といった試みが成されて来た、ということです。

 実際やってみると案外手間となる要素もあり、どの方法も中々漸減投与に取って変わっていないのが実情です。

 ほっといてもブタ並みに排卵する牛がつくれないものだろうか?と妄想しつつ今日の筆を置かせていただきますpaper

2015年4月 1日 (水)

新年度

今日から新年度が始まりました。
ET研究所には新人2名が新しく仲間入りしました~!shadowshine

新年度一回目の採卵も行いました。
今年度も受精卵増産のため職員一同がんばっていきたいと思います。good
どうぞよろしくお願いします。

2014年12月17日 (水)

爆弾低気圧

今朝は除雪車の音で目を覚ましました。
除雪車のプワーンプワーンって音とオレンジ色の光。

そんなに大雪になったのかと覚悟しましたが、想像以上でした!
なんと十勝の新得町では69センチの積雪。ET研究所ではおおよそ50センチはありました。snow


ET研究所への道

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雪のせいで車線がひとつしかありませんsweat01

除雪後の研究所牛舎前

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なんでも数年に一度の猛吹雪なんだそうです。でっかい台風並!外出禁止!表現に困るほどの危険な低気圧!などとニュースで報じられていました。bearing
明日はさらに吹雪くそうです、気をつけてください!

今日は雪のため若干開始は遅れましたが7時ごろから採卵を行いました。飛行機も遅延等あったものの、無事飛びチルド受精卵の出荷もできました。airplane よかった〜、一安心。


年内の採卵も残りわずかとなりました。需要に追いつくよう職員一同対応していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

2014年9月 4日 (木)

ヒートストレスからの回復

9月ですね。

今年は冷夏という記事もありましたが、十勝はさらに最近めっきり涼しくなってきました。

ヒートストレスは繁殖に悪影響を及ぼすのは皆さんご存知かと思います。

季節的に過ごしやすい秋口は牛の繁殖にうってつけのようにも思えますが、ヒートストレスからの回復はそう簡単ではないことを明らかにした論文をご紹介します(ちょっと古いのですがcoldsweats01

タイトル:Improvement of quality of oocytes collected in the autumn by enhanced removal of impaired follicles from previously heat-stressed cows

(和訳:ヒートストレス感作により傷害を受けた卵胞の積極的な吸引による秋季回収卵母細胞の品質の改善)

出典:Reproduction (2001) 122, 737–744

著者:Rothら(ヘブライ大学)

緒言:

 乳牛の繁殖能力は夏季に低下するが、ヒートストレスが消失した秋季であっても低い状態が続く。

 本研究は夏季のヒートストレスが遅延して秋季の卵母細胞の品質に及ぼす影響を明らかにするとともに、夏季にヒートストレスを受けた卵胞を積極的に除去することで卵母細胞の品質を改善させることを目的に行った。

材料及び方法:

供試動物:夏季にヒートストレスを受けたホルスタイン種経産牛 16頭

実験方法:秋季に4つの連続した発情周期において、試験区、対照区下記の日程で3-7 mmの卵胞を超音波ガイド下でOPUにより吸引した。発情19日目でPGF2αを投与し、発情21日目でGnRHを投与し、繁殖周期を維持させた。各周期のDay4で回収した卵母細胞を体外受精に供した。

表: 対照区と試験区における4つの連続した発情周期において卵胞を吸引した日程

対照区

Day 4

試験区

Day 4, 7, 11, 15

 

結果:

・高品質胚(グレード1)の割合の増加が試験区(周期2)の方が対照区(周期3)より早かった。

・卵割率は対照区で38-58%であったが、試験区では40-75%であり、周期3,4で有意に高かった (P < 0.05)

・胚盤胞発生率は、試験区では低いままであったが、対照区では周期3、4で有意に増加した(P < 0.05)

 

・・というわけでヒートストレスの影響は涼しい秋になってもしぶとく残り続けるようですeye一方傷ついた卵胞を膿を取り除くように頻繁に吸引することで、卵母細胞の発生能は高まるようですね!

受精卵回収においてもプログラムに入る前段階での卵胞吸引が有効な気がしますhappy01

 

2014年5月 1日 (木)

キスペプチンってどうなんよ?

 動物の繁殖に関わっている方ならGnRHを投与したことはおありかと思います。

 GnRHは排卵促進剤として主に用いられ、LHの一過性の過剰分泌を起こしたり、またFSH・LH双方の拍動性の分泌を引き起こす非常に大事なホルモンですが、このGnRHの分泌をさらに上位で支配しているのがキスペプチン(メタスチン)です。

 このキスペプチンが実際牛の繁殖で使えたりしないのかなぁと常々思っていたのですが、最近牛と同じ反芻動物で、一年を通して繁殖が可能であるシバヤギに、キスペプチンの治験薬を投与し、卵胞発育、黄体機能、生殖ホルモンの分泌に与える影響について検証した論文が出ました。

題:Ovarian and Hormonal Responses to Follicular Phase Administration
of Investigational Metastin/Kisspeptin Analog, TAK-683, in Goats

(和訳:メタスチン/キスペプチン作動性治験薬の卵胞期投与のヤギにおける卵巣と内分泌反応)

ジャーナル:Reprod Dom Anim 49, 338–342 (2014); doi: 10.1111/rda.12283

著者:Y.Goto et al.(東京農工大)

材料および方法:下図参照

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結果:

・投与6h後のLH・FSH濃度が試験区で増加した一方、E2濃度は投与12時間後以降対照区が高くなった。

・排卵時期は対照区平均に対し試験区2頭で遅延し、1頭で早まった(もう一頭はデータなし)。

・排卵数に差は見られなかったが(対照区:4.7個、試験区:3.3個)、試験区の方が対照区より排卵した卵胞の最大直径が小さくなった(対照区:5.4mm、試験区:3.8mm)

・排卵②以降のP4濃度が試験区で低下した。

 個人的にはGnRHより上位の中枢を叩くことにより、より鋭敏に排卵性の刺激が誘引できるのかなぁと考えていたのですが、そういった結果は得られていないようで、むしろ投与後のE2濃度低下、排卵以後のP4濃度低下といったネガティブエフェクトが目立つという印象を受けました。投与量等まだ検討課題はあるかもしれませんが、生殖内分泌は一筋縄ではいかないということを改めて痛感した論文でしたthink

2014年3月 6日 (木)

繁殖寿命を制御する遺伝子

最近興味深く読んだ論文をかいつまんで紹介いたします。

題:Loss of the pro-apoptotic BH3-only protein BCL-2 modifying factor (以下BMF) prolongs the fertile lifespan in female mice(和訳:アポトーシス促進性のBH3-onlyタンパク質であるBMFが雌マウスにおける繁殖寿命を延長させる)

著者:Seng H. Liewら

ジャーナル:Biology of Reproduction in Press. Published on February 26, 2014 as DOI:10.1095/biolreprod.113.116947

緒言:

女性の繁殖寿命は卵巣内に原始卵胞として貯蔵されている卵母細胞の数に影響される。

貯蔵されている原始卵胞で、発育したもののほとんどは退行し、実際に排卵までにいたるのはごくわずかである。

胎生期および出生後の卵巣発育における細胞死(アポトーシス)が卵巣内における原始卵胞数を決める重要な役割を果たしているが、個々のアポトーシス制御因子の役割はよくわかっていない。

 アポトーシス促進タンパク質の一つであり、精巣において生殖細胞のアポトーシスを引き起こすと考えられているBCL-2-modifying factor(以下BMF)が生体卵巣内で維持される原始卵胞数と繁殖寿命の長さの決定にどのような役割をもつかを調査するため、遺伝子改変マウスを用いて実験を行った。

方法:

・野生型マウスおよびBMF欠損マウス(以下BMF-/-)それぞれについて、日齢20、100、200、300、400、545で各6頭のマウスを使用し、卵巣を回収。鏡検し、卵胞数および退行卵胞数を計測

・20、150、300日で過剰排卵処理を実施、排卵誘起した後、卵管より卵子を回収し、卵子数を評価

・野生型とBMF-/-マウスそれぞれを野生型オスと同居させ、18ヶ月齢までの産子数、分娩頻度、産子の健康状態を記録。

結果:

BMF-/-マウスは

・原始卵胞数が野生型マウスに比べ、出生後20日目では変わらなかったが、100、200、300、400日で多くなった。

・退行卵胞数が20日目まで有意に少なく、以降の日齢では野生型と変わりなかった。

・過剰排卵処理により得られた卵子数は野生型マウスと変わらなかった。

・繁殖能力について:下表参照

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考察:本研究はBMFが成体の繁殖適齢期を通して卵巣内において維持される原始卵胞数を決定する重要な役割を果たしており、したがってBMFの働きを抑制することで、卵巣内に維持される原始卵胞数が増加し、女性の繁殖寿命を延長させることができるかもしれない。

 この報告はマウスについての報告ですが、牛でも同様の遺伝子改変動物が作出できるなら、産子数の増加が見込めるかもしれません。

 また、全農ET研究所では黒毛和種供卵牛に対し頻回のにわたる受精卵回収を行っています。採卵を繰り返し行っていくうちに品質の高い受精卵がほとんど回収できなくなってきますが、本研究と同様の形質を持った牛ならば、安定して長期間にわたり高品質の受精卵が回収できる事も見込まれます。

 調べた限りでは牛についてはまだBMFについての報告はないようですが、牛でも同様な遺伝子が見つかれば、高い繁殖能力を持った牛の選抜につながりうるかもしれませんね。

2014年2月20日 (木)

ホルスタイン優良受精卵のご紹介

本日、ホルスタイン優良受精卵のリストを更新いたしましたので、ぜひご一読をsign01

ET研究所のホームページは→→→コチラより。

今回は、”ハーゲン”と、”エリザベスファミリー”と、”ポリー”

をご紹介させていただいております。

本牛も北海道ナショナルショウで1等2席、ベストアダーを獲得sign01ファミリーも輝かしいショウ歴、

”ビユーテイ ライトニング ハーゲン” × ダンデイー

かの有名なバドジヨン JK スカイツク エリザベス ETのひ孫、

”ダンケー サンチエス フオーエバー” × アドベントRED

EX95、ウインデノールビユー プレツジ ETの孫

”ダンケー サンチエス ポリー ET” × アトウッド

さらに詳細をご覧になりたい方は、コチラより(PDF)。

優良ホルスタイン受精卵は期間限定の提示となっております。

早いもの順ではございませんが、一定の期間が過ぎましたらリストから

下げさせていただきます。

ご容赦くださいconfident

2014年2月 6日 (木)

寒さと栄養状態

 最近の寒さ関係の話題が多いですが、昨日に引き続き寒さ関係の話題です(キリッ)!

 我々全農ET研究所の事業は「受精卵」で成り立っており、受精卵が採れなければ何も始まりません。

 我々に受精卵を提供してくれる黒毛和種の雌牛たち。彼女らの生産限界温度は-10~30℃らしいのですが、にも関わらず今日の上士幌の気温は何と-8~13℃!!このような極寒状態の中で彼女たちの栄養状態はどのような状況なのかを把握するために血液検査を行ったところ、以下のような結果が得られました。

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 タンパク質の代謝を表すBUNが低く、血糖値(Glu)が高くなっています。

 恐らく餌にタンパク質が十分含まれておらず、かつこの寒さによって、ストレスを受けると分泌されるホルモン(コルチゾール)の働きにより血糖値が上昇したものと推察しています。

 検査する前は、体温を増加させるために血糖を消費しまくってるだろうから血糖値が下がって、かつタンパク質もエネルギー源として使われているだろうからBUNは高くなっているんじゃないかと想像していたのですが、真逆の結果となりましたcoldsweats02

 摂取した栄養分と生産のために消費した栄養分のバランスを診断する方法として代謝プロファイルテストと呼ばれる方法があります。今回はかなり簡易的なものですが、その奥深さを感じるいい機会となりましたconfident