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生産 Feed

2013年12月24日 (火)

PGを毎日投与すると・・・

最近興味深く読んだ論文を紹介させていただきます。

Influence of repeated dinoplost treatment on ovarian activity in cycling dairy cows

Kazuyuki kaneko, Nobuaki takagi

(Theriogenology 2013 article in press)

目的

 分娩後の牛は長期にわたって血中のPGFM濃度(PGF2αの代謝物)が高く、人工的に子宮内を細菌感染させた牛でも血中PGFM濃度は高くなることが知られている。そこで、長期にわたるPGF2α投与が卵巣機能にどのような影響を与えるかを調査した。

材料および方法

供試動物:繁殖周期が正常な、ホルスタイン種経産牛

実験内容:自然排卵した日をDay 0とし、Day 1からDay 21までPGF2α製剤(プロナルゴンF 5 ml)を投与した。Day 30まで毎日卵巣観察および採血を行い、得られた血液によりP4濃度を測定した。

結果(ダウンロードファイル参照)

1.gifをダウンロード 

  結果の通り、PG投与区では正常な繁殖周期は見られず、黄体形成が不十分であった他、少数ではあるものの卵胞嚢腫となる個体も見られました。

 子宮内感染と卵胞嚢腫の発生には相関があることが知られており、個人的には子宮内感染が引き起こしうる種々の影響の中でもPGF2αの上昇という内分泌的な素因によって卵胞嚢腫が引き起こされうるということが非常に興味深く感じられました。

 頻回の排卵促進剤の反応しないような牛に対しては、子宮内膜の状態を改めて検査し、内膜炎であるならば治療を施すことが必要な場合も多いのではないかと考えられます。また、ひょっとするとCOX2阻害剤投与によってPGF2αの産生を阻害することで、どんな治療にも反応しなかった卵胞嚢腫が治るといったことも起こりうるかもしれません。

2013年12月10日 (火)

カビ毒勉強会

新ETで出向いた農家さんからも好評を得ているというカビ毒吸着剤「マイコフィックス」。本日はその輸入・販売を行っている日本ニュートリションの方が来所され、カビ毒とマイコフィックスの概要についての講義を行っていただきましたhappy02
製造元の業者の調査では、飼料検体の83%はカビ毒に汚染されており、飼料として加工されてからではなく圃場で既に産生し始められ、収穫、輸送、貯蔵の機関を通して飼料を汚染し続けるとのことでした。またカビ毒は目に見えず、匂いも味もないので、産生源であるカビそのものを取り除いても飼料に残り続けるため、吸着剤等で対処する必要がある一方、デオキシニバレノール(DON)、ゼアラレノン(ZEN)といった日本に広く分布しているカビ毒は吸着剤には吸着されにくい性質を持っておりマイコフィックスは吸着剤とともに含まれる酵素によってDON、ZENを分解し、無毒化するのことでした。

製品情報に留まらず、カビ毒について幅広く教えていただき非常に勉強になりましたhappy01

日本ニュートリションの皆様、本当にありがとうございましたsign01

カビ毒だけにかかわらず、季節、ホルモン剤、飼養管理等繁殖にかかわる要因は多岐にわたるため、常に広い視点を持って勉強していかなければならないなぁと思いますconfident

2013年11月26日 (火)

伸長胚を用いた雌雄産み分け

 先週とある新聞に授精後14日目の伸長胚(長さ0.5 mm以上)の一部を直接切り取り、性判別を行うという記事が載っていました。

 方法は実体顕微鏡下でメスを用いて伸長胚の一部を切り取って雌雄を判別するというもので、従来法に比べ簡便にできるというものです。

  実際にETも行っており、凍結保存した伸長胚3個を3頭に移植したところ、うち2頭で受胎し、1頭はすでに出産しているとのことでした。

  残念ながら実際の移植方法等の詳しい情報は記事には記載されておりませんでしたが、個人的には「牛のETに用いるのは授精後7日目周辺の胚」という思い込みのタガが外され、衝撃的でした。

 現在雌雄産み分け技術といえば性選別精液の人工授精やバイオカッター等で胚の細胞を切り出し性判別を行う方法等がありますが、いずれにしろ高価な機器や一朝一夕で身につかないような技術が必要です。

 誰でも、どこでも、安くできるというポイントは現場に生きる研究を行う上で欠かせないものであり、そのポイントを抑えた上で視点を変えてみることの大切さを改めて感じさせられましたconfident

2013年11月21日 (木)

和牛の双子

先日14日、日本農業新聞に和牛受精卵2卵移植の記事が載っていました。

日本農業新聞11月14日の記事(クリックすると記事に飛びます)

これは黒毛和種経産牛の試験ですが、

双子を妊娠したのち、分娩2か月前までは母牛1頭分、

その後3週間前までは母牛と子牛の分、

それ以降は養分が3割増加するように給与をすると、安定的に

双子が生産できます、という記事です。

ただ双子を妊娠すると、単子に比べて1週間程度妊娠期間が短くなる傾向が

あるそうです(記事より)

先週この記事が出てきたころ、

栃木県にある、全農南那須牧場に来ておりましたtaurus

ETのための選畜です。

この牧場では積極的に2卵移植を行っており、以前このブログでも紹介しました

双子と単子)。

処置をしていた牛房のすぐ隣には、先日生まれたという双子とお母さんheart01

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お母さん牛が怖くて近寄れませんでした・・・お昼寝中の百合茂産子たち。

先日生まれたばかりであまり走り回ったりはしていませんでしたが、

非常にかわいかったので写真をとっていました。

・・・すると別分房が何やら騒がしい。

見渡してみると、なんと別の牛が双子を分娩しているところでしたlovely

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無事に百合茂の双子がするっと生まれましたsign01

やはりこの牛も新聞記事同様、予定日より1週間ほど前に分娩したとのことです。

去年牧場の後輩から話を聞いたとき、まだ牛も若くて大変だったようですが、

最近は牛も経験をつみ調子が良くなってきたとのこと。

和牛生産基地として、これからもがんばれよ~up

2013年10月22日 (火)

子宮修復と受胎率

牛の繁殖分野において、一年一産が農家経営の目標になっていますが、分娩後の卵巣機能の回復や子宮修復の遅延により、この目標達成は大きな課題となっていると思いますtaurus

最近読んだ文献で、面白い記事があったので、参考程度に読んでいただけると幸いですthink

「分娩後早期のPRIDの膣内挿入が黒毛和種牛の子宮修復と受胎率に及ぼす影響」

目的
分娩後早期の黒毛和種牛に卵巣賦活処置としてPRIDによる発情同期化と定時AIが、発情回帰や受胎律に及ぼす影響について検討した。

材料および方法
正常に分娩した2産以上の黒毛和種牛を使用。
分娩後29.5±2.3日をDay0とした。Day0で黄体がある牛にはPGF2αの投与、黄体がない牛にはGnRHを投与した。Day7でPRIDを挿入し、9日後のDay16に除去、同時にPGF2αを投与した。
PRID除去後24時間にE2を1mg、または48時間にコンサルタン(GnRH)と投与し、PRID除去後56時間に定時AIを行った。
その後、Day28(定時AI後10日)に黄体確認、Day49(同31日)でエコーにより早期妊娠診断を行った。

結果
Day0にGnRHか、PGF2αを投与すると、Day7で卵巣に機能的黄体のある牛が増加し、血中プロジェステロン濃度もDay0と比較して有意に上昇した。
また定時AIの受胎率は、Day7に黄体が無い牛よりもある牛で高い傾向にあった。
また、Day0からDay28にかけて左右子宮角の長さは有意に短くなり、同時に外子宮口の細菌数も減少する傾向にあった

結論として、分娩後早期からの卵巣賦活とPRID処置は子宮修復を促し、受胎率の向上に寄与することが示されました。

結果としては、まあ期待した通りの結果だなという印象は受けますが、もしこれらのちょっとした処置で子宮修復が早まれば、一年一産の目標クリアも夢ではないのかもしれませんねtaurus

だけど思い通りにいかないのも、動物の繁殖生理学の難しさだと私は思いますconfident


2013年10月11日 (金)

黄体と卵胞の同居

少し前の話になってしまいますが、先月の12日から14日、東京農工大で開催された「第106回日本繁殖生物学会大会」に参加して参りましたsign01

 その際特に筆者自身が興味深く感じた発表についてご紹介させていただきます。

 

 新ETシステムでは移植1~2日前に「黄体検査」を行い、黄体がきちんと形成されているか、左右どちらにあるかを超音波診断器でチェックするわけですが、この際黄体がある卵巣に卵胞(エコーで黒く抜ける部分)がある場合とない場合があることにお気づきの農家の方もいらっしゃるかと思います。

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この時見られる大きな卵胞は卵胞発育の第一波でできた主席卵胞であり、この卵胞が黄体と同じ卵巣にあるかないか(図2)により人工授精の成績に極端に影響が出るという発表がありましたsign01

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「黄体と同側の卵巣に位置する第1卵胞波主席卵胞の存在はウシの受胎率を低下させる」

三浦 亮太朗ら(帯広畜産大)

目的: 第一卵胞波が繁殖生理や受胎性に与える影響はよく分かっていない。

→第一卵胞波主席卵胞が黄体と同一卵巣内に共存するまたは共存しないことが人工授精での受胎率にどのような影響を与えるのかを検証した。

結果: 

総頭数

(総受胎率)

114頭(57.0%)

黄体と

第一卵胞波

非共存(60頭)

共存(54頭)

AI受胎率

72.2%
(経産:62.1%,

未経産:84.0%)

40.4%
(経産:27.6%,

未経産:55.6%)

 

上記の表のように第一卵胞波主席卵胞と黄体が共存する場合はそうでない場合と比べて極端に受胎率が低くなった。

また、血中プロジェステロン濃度は排卵後3日目で非共存群が高くなり、それ以降(6,12日目)は差がなかった(経産牛のみのデータ)。

 

・・・といったように、受胎率が30%近くも異なるという衝撃的なデータが出ていますthunder

  研究所職員が取ったデータでは、ET前の黄体検査で第一卵胞波主席卵胞が黄体と同一卵巣内に共存するか共存しないかにより受胎率に差はありません。

 これは今回紹介した発表において、6日目以降のプロジェステロン濃度に差がないことからも頷けます。

  つまり、第一卵胞波主席卵胞は黄体が形成されつつある初期の段階で悪さをし、黄体がしっかりと形成された後はあまり影響がないのではないか、ということです。

  もし授精後初期段階で主席卵胞が排卵した卵胞と同側に見られるなら、CIDRなどのプロジェステロン製剤の投与が特に有効になるのではないかなぁ、と感じました。もしくはいっそ卵胞を吸引 or 破砕してしまうのも一つの手なのかもしれません。

2013年8月30日 (金)

ウシの蹴り

久々にやられましたwobbly

直腸検査をしようとウシの背後に近付いた瞬間、バゴーーンimpact

膝のあたりをおもいっきり蹴られましたweep

ウシは基本蹴るものだと常々思いつつも、やられると気持はかなり萎えますdown

今回は痛みが少しある程度で問題はありませんでしたが、当たり所が悪ければ最悪骨折などしゃれになりません。

ウシに蹴られないためには常に気を張って工夫する必要があります。

まず、ウシに触る前にヒトがいますよ~と一声(今回はこのとき間合いが近すぎて蹴られましたが…)。

ここで問題なければ、これからなにかしますよ~とワンタッチ。これでウシが過敏に反応したり蹴りがなければ作業開始です。

先日の記事にもありましたがウシの性格は様々で、人のことなど気にせず作業させてくれるウシもいれば、明らかに悪意をもって蹴りをかましてくるとんでもないやつもいますangry

そんな悪意あるウシや反射的に蹴ってしまう神経質なウシは皆で情報を共有し、次の被害者が出ないよう気をつけたり、蹴るとわかっていれば枠場にいれたりモクシて保定してから作業をするなどの工夫も大切です。

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↑は採卵時の写真ですが、枠場にいれてウシを保定するとともに、後ろ脚のところにロープを張ることでウシの蹴りを防いでいます。

中には採卵中ロープを蹴り続けて恐怖を感じさせてくれるやつもいますが、おかげで怪我もなく採卵ができていますhappy01

よく注意一瞬、怪我一生なんていいますが慣れとともに注意が行き届かなくなります。久々に蹴られて改めてウシは危ないものだと気づかされましたthink

2013年8月27日 (火)

人懐っこい牛

ET研内に飼われている供卵牛たちは、それぞれ性格が違います。

私は個体ごとの性格を細かく記憶できていませんがcoldsweats01

極端に人懐っこいのは記憶に残ります。625

この牛は、以前東日本分場にいたのですが、

東日本分場でいちばん人懐っこかったのでとても印象に

残っています。東日本でG1056→B415と耳標が変わり、

本場に移動してからは写真のようにまた耳標番号が変わりました。

分場内では牛房に入ると、「なでてちょうだい」と近づいてきて、

ずーっとなでられていた牛です。分場のある方がけっこう可愛がって

くれていたために、こんなに人懐っこくなったのかもしれません。

久しぶりに、本場でも元気にやってるかと見に行って近づくと・・・・

逃げられる!!ガーンcrying

牛に忘れられておりました。

(写真のようにスタンチョンに入っているときは、愛らしく

においをかいでくれます)

おそるおそる近づいて、逃げようとする牛をなでてみると・・・

昔を思い出したのか、じっとなでられておりましたhappy01

2013年8月 2日 (金)

ホルモン剤による受胎促進

研修にこられる方から移植後に何かホルモン剤は投与していますか?と聞かれることがよくあります。

ET研では移植後にhCG製剤やGnRH製剤を投与することもあり、黄体の機能促進によるP4強化を期待しています。

一方で、その効果についてはどの程度のものなのかは判断が難しいところで、個人的にはおまじない的な気持ちで使用していましたgawk

今月号の臨床獣医という雑誌にホルモン剤による牛の繁殖管理という特集が組まれていて、この疑問に答えてくれていましたshine

記事によると

発情後5~7日のhCGおよびGnRHの投与は排卵を誘起し、その後の血中P4濃度が上昇する。また、受胎率の改善がみられる報告がある。

とここまでは良く知られているところで、続きを読むと

GnRHにくらべhCGのほうが血中P4濃度を速やかに上昇する。その理由はhCG自体がLH作用を示すことと、半減期が長いため既存の黄体も刺激するflair

と書かれており、要はhCGのほうが効果が高いup

ということのようです。どちらを選択するか判断に悩むこともありますが、その作用機序も絡めて理解することができスッキリしましたhappy02

しかし、記事にも注意をしてありましたがhCGを35日間隔で繰り返し投与すると抗体が産生されることから、高頻度の使用はしないようにする必要があるようです。

まとめると、基本はhCGで投与歴が浅いものはGnRHほかを処置することで受胎率がよくなるかもしれない、ということですねgood

2013年5月25日 (土)

「追い移植」、単純?奥深い?

例えば酪農で歴史年表を作ってみると、

「1年1産させるためには!」幕府時代

は終わりを告げ、

現在は、
「何とか、もう1産させましょう!」幕府時代

へと「あっ!」という間に移り変わってしまったような気がします。

これも近年の人工授精(AI)による受胎率低下がその要因となっているのではないでしょうか?

ニュースでは、夏季のフロリダのAI後の受胎率が5~10%と大きく落ち込んでいるようです。

また、九州や本州の酷暑期は、それに近い状況であるなどの話もお聞きします。

このようなAI後の極端な低受胎率を改善するために

発情期のAIに続き、その7~8日後に受精卵移植(ET)を行う

「追い移植」が有効であると我々は考えています。

(注:「追い移植」は双子分娩の可能性があるため、細やかな分娩管理が必要となります)

ところで、この「追い移植」、英語ではどのような表現をするのでしょう?

「ET after AI」でググってもそれほどヒットしません。

ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

さてさて、

今日は「追い移植」が有効である理由を考えてみたいと思います。

まず単純に

①AI由来胚とET由来胚の2胚が子宮内に存在するので、どちらかが受胎すればよい

ですね。

しかしながら、「追い移植」は2胚ETより受胎性が高いとの報告もあるようなので、

胚数だけの単純な理由ではないかもしれません。

そこで、

②発情期のAI行為が子宮内環境に影響を与え、その後のETの成功率を改善する

などは考えられないでしょうか?

例えば、

AI時の直腸検査(子宮や卵巣の触診)が刺激になったり、

AIガンを子宮内に挿入することが刺激になったり、

子宮内に精子が存在することが刺激になったり、

凍結精液中に少しだけ含まれる精漿成分が刺激になったり、

精子の凍結保護物質の成分が刺激になったり、

さらには、受精卵が発情後1~2日目と早い段階で子宮に存在することが刺激になったり、、、

などなど考え始めるとキリがありません。

と言うのも、以前の我々の研究において、

AI行為が、

子宮内免疫細胞の分布を変化させ「良い影響」を及ぼしている可能性を示しました。

しかしながら、この「追い移植」、ET由来産子ではなく、

発情期のAI由来産子が生まれてくるケースも多々あるため、

一概に②が正しいとも言えません。。。

「追い移植」は奥が深い?