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研究 Feed

2013年4月 8日 (月)

クローン

「クローン」という言葉は今となっては多くの方がご存知だと思いますear

理化学研究所では、1匹のマウスから同じ遺伝情報を持つクローンを作り、

そのクローンからさらにクローンを作るという研究を行なってきました。

クローンはマウスで6世代までが限界で、

クローンの作出を繰り返すごとに成功率は低くなり、

ウシや豚でも2~6世代までが限界とされていましたdash

ところがsign01

なんとsign03

このグループでは7年間26世代計598匹作ることに成功したそうですsign03

す・・・すごい・・・coldsweats02

2005年末からマウスのクローン作りを開始し、

成体になるまでの約3ヶ月ごとに次の世代のクローン作りを繰り返し、

薬剤を改良することにより、クローンの作出率も改善していますflair

家畜の優良血統や絶滅危惧種の保存に役立てる可能性がありますねup

しかし、安全面や倫理面などクローン技術には多くの問題点がありますので、

実用化するとなると難しいのだと思いますsweat01

・・・う~ん、すごい技術ですthunder

我々も精進しなければなりませんねbearing

Photo

2013年4月 5日 (金)

ovsynch法と性比

発情と授精のタイミングと生まれる産子の性比については早いと雌が多く、遅いと雄が多いとよく言われます。

では、定時人工授精ではどうなのでしょう?

そんな報告が最近出ましたので紹介します。

【Presynch-ovsynch法と24時間後の人工授精はホルスタイン種泌乳牛の雄子牛分娩を増加させる】

【原題:More mare calves born after Presynch-Ovsynch protocol with 24-hour timed AI in dairy cows】

theriogenology 79 (2013)

<方法>

健康なホルスタイン種牛(N=1102)をランダムにPresynch-ovsynch群(N=564)と対照群(N=538)に分けた。Presynch-ovsynch群は14日間隔で2回PGF2αを分娩後23-27日に投与。2回目のPGF2αから12日後にGnRHを投与、その7日後にPGF2αを投与し、さらに48時間後にGnRHを投与した。牛は2回目のGnRH投与後、24時間後に定時AIをおこなった。対照群はとくに処置はせず、スタンディング発情の12時間後にAIした。子牛の性別は分娩後に確認し、性比を計算した。

<結果>

Presynch-ovsynch子牛の雄/雌 比は対照群よりも高かった(雄/雌 = 1.69 vs 1.09; P<0.05)。

さらに、雄/雌 比は受胎した季節が夏、秋および冬のほうが春よりも高かった (P<0.05)。

<感想>

ovsynch法を用いて、最後のGnRH投与後24時間での定時人工授精では雄の割合がなんと1.5倍にもなるという結果でしたflair

筆者らの考察ですが、やはり24時間後ではタイミングが遅く雄の割合が増えているのではないかということです。

ということはタイミングを早めれば雌が増える?かもしれませんね。

受胎季節と性比もみていますが、夏はovsync群でなんと72.7%が雄という結果になっています…逆に春は雌が増えるため季節の影響も無視できないかもしれません。

Photo 

↑今日現場作業中に見かけた分娩中の牛

そういえば農家さんは子牛の前足を見れば雄雌がわかるらしいですが本当なんですかね?

2013年3月31日 (日)

子牛虚弱症候群(CWS)

子牛虚弱症候群(CWS)の原因の一つとなる遺伝子が、H24年度、発見されました。

“IARS遺伝子”と呼ばれる遺伝子です。
CWSとは、発症すると肺炎や下痢にかかり易くなり、発育不良や斃死の原因となってしまいますwobbly
この症候群の原因は妊娠中の母親の栄養状態や、難産および初乳からの受動免疫不全などが
考えられておりますが、はっきりとした原因はわかっておりません。
しかし、今回の“IARS遺伝子”は、そのほかの遺伝子疾患(CL16や、CHSなど)と同様、
キャリアー同士の交配により、子牛虚弱症候群の発症牛が
25%の確率で出てくることがわかりましたbearing
(IARS遺伝子が原因のものは,IARS異常症と呼ばれるそうです。)
現在、キャリアーとなる種雄牛は、安福、飛騨白清などが公表されています。
(岐阜県の家保が公表している分は、こちらです。
全農ET研究所では、平成25年1月に、全供卵牛の遺伝子検査を終了しました。
少なくとも、遺伝子が原因で病気が発症しないよう、平成25年度もこころがげていきますので、
平成25年度もET研究所の受精卵をよろしくお願いいたします

2013年3月18日 (月)

受精卵の呼吸

受精卵の品質は顕微鏡下で形態観察し、判断しています。

細胞数、細胞の結合の強さ、形や色などなど・・・が評価の対象になります。

確かに形態評価は受精卵の品質を評価する上では基本中の基本ですねgood

かなりの重要ポイントですsign03

しかし、見た目だけでは判断しきれない部分もあると感じますthink

例えば、受精卵の元気度を呼吸の強さで評価する

「受精卵呼吸測定装置」なんてものも開発されておりますflair

細胞活動に必要なATPはミトコンドリアでの呼吸によって産生されていますdashdash

様々な動物種の胚を用いた研究においてミトコンドリアが正常に発達している胚は、

高い品質の良好胚であることが明らかとなっています。

すなわち、活発に呼吸している胚が良いということですねcatface

ヒトの研究で、不妊患者41人を2グループに分けて検討したところ、

形態の良さで選んだ受精卵を子宮に戻したグループは

21人中8人(38%)が妊娠だったのに対し、

形態評価に加えて呼吸量も評価し、受精卵を選抜したグループは

20人中12人(60%)が妊娠したことが報告されております。

この技術は体外受精胚やクローン胚の移植などに有効かなぁと思いますが、

測定装置はかなりの高級品です・・・crying

大人しく見た目だけで判断することにします(笑)

God eyesを手に入れることにしますshineeyeshine

Photo

↑見た目が同じようでも妊娠するとなると差があるのかもしれませんね

2013年2月25日 (月)

雌から雄へ

ニワトリの雌として生まれるはずの卵を雄の卵に性転換することに

北大の研究チームが成功したと

米科学アカデミー紀要電子版(PNAS)で発表されましたmemo

まず、このチームは性が決定される時期の生殖腺(将来精巣や卵巣になる組織)で

発現する遺伝子を雌雄間で網羅的に比較しました。

すると、「ヘモゲン遺伝子」が雄で強く発現していることを突き止めましたflair

そこで、本来雌になるはずのニワトリ卵に「ヘモゲン」を過剰発現させたところ

卵巣になるはずの生殖腺が精巣に発達し、

雌の卵33個が全て雄化したことを確認したそうですcoldsweats02

この「ヘモゲン」はヒト(哺乳類)では血液細胞を作るために働いており、

性決定には無関係なのですdown

鳥類に特異的なものなので、すぐに他の動物に応用できる・・・とはいきませんbearing

しかし今後簡単な操作で受精卵の性の決定をできるようになればいいですねsign01

2013年2月12日 (火)

近頃、血中遊離DNAが気になります、その2

先週ご紹介した「血中遊離DNA」ですが、

立て続けに同じグループから論文が発表されました

Analysis of Circulating DNA Distribution in Pregnant and Nonpregnant Dairy Cows

Mayerら、Biology of Reproduction, 2013

人工授精後20日目の妊娠牛(24頭)と非妊娠牛(16頭)の「血中遊離DNA」を回収し、

次世代シーケンサーで差を確認したところ、

牛は妊娠初期でBovB、Art2A、BovA2、Bov-tA2などが体の中をグルグル回っていることが明らかとなりました

これらがどのような働きをするのかまだはっきりとわかっていないようですが、

予想通りと言いますか(妊娠20日目なので)、

インターフェロンタウ(IFNt)や妊娠関連糖蛋白質(PAGs)

とからめて考察されています

次の展開が非常に楽しみな研究です

2013年2月11日 (月)

パーコール法

今日は体外受精時に行なう精子の洗浄方法の1つである

パーコール法について説明しますflair

パーコール法とは45%と90%のパーコール液を用いて、

密度の違いで精液中の不純物や死滅精子などを取り除き、

元気な精子のみを分離する方法ですscissors

まず、一番下に90%パーコール液を入れ、

その上に45%のパーコール液を重ねますconfident

さらにその上に精液を静かに重ねると・・・

比重の違いで写真の様な層ができあがりますdownwardleft

Photo

45%と90%の境目が分かりづらいですが、

慎重に重ねるときちんと層に分かれますgood

この状態で遠心分離を行ないますtyphoon

すると・・・

Photo_2

遠心管の一番下に白い物が貯まっているのが見えますが、

これが分離した元気な精子くんですnote

(写真が見づらくてごめんなさい)

このようにして体外受精では、

死滅精子や異常精子を取り除くことができます~catface

こんな簡単な方法でX精子も分離できたらなぁなんて思いますcoldsweats01

そううまくはいきませんねsweat01

2013年2月 8日 (金)

春機発動はまだ?その2

先週、春機発動について書きましたが、その続きです。

ちょうど春機発動を促すホルモン処置に関する論文があったので紹介したいと思いますhappy01

春機発動前のNellore種未経産牛におけるプロジェステロンをペースにした排卵誘起の方策

(原題:Progesuterone-based strategies to induce ovulation in prepubertal Nellore heifers)

Theriogenology 79 (2013) 135-141

【緒言】

春機発動を引き起こすための研究は様々おこなわれています。

プロゲステロンを処置すると下垂体のエストロゲンレセプターを減少させ、エストラジオールによるネガティブフィードバックを減退させることで、GnRHの放出を促すと考えられており、プロゲステロン製剤の使用で未経産牛が春機発動を迎えたとする報告があります。

そこで、この研究ではプロゲステロン製剤のCIDRとその他のホルモン剤を春機発動前のNellore種未経産牛に処置し、その後の発情、排卵、AIの受胎率を調査しました。

【方法】

エコーで7日間隔で卵巣を確認し、黄体のない牛を試験に使用。

試験1は3回使用した後のCIDRを12日間腟内に留置したもの(CIDR4)と無処置(CIDR0)のもので、その後の発情、排卵、AIの受胎率を調査。

試験2はCIDRのみの処置をコントロールとして、CIDR抜去時にeCGを200IU注射。

試験3は試験2に加えて、CIDR抜去時にeCG+ECP(シピオン酸エストラジオール)50㎎を注射。

試験4は試験3に加えて、CIDR抜去時にECPのみ注射で排卵率のみ観察。

【結果】   

発情発見率 排卵した割合 受胎率
試験1 CIDR 0 10.7%a(19/177)   18.6%a(33/177)   79.0%a(15/19)
CIDR 4 16.6%b(143/862) 39.1%b(337/862) 42.0%b(60/143)
試験2 コントロール 27.6%a(124/450)   53.3%a(240/450)   43.6%a(54/124)
  eCG 34.3%b(153/446)   72.0%b(321/446)   45.1%a(69/153)
試験3 コントロール 21.5%a(17/79) 45.5%a(36/79) 46.7%a(7/17)
eCG 34.4%b(55/160) 75.0%b(120/160) 34.7%a(17/55)
eCG+ECP 56.2%c(91/162) 90.1%c(146/162) 33.3%a(27/91)
試験4 コントロール -   74.9%b(176/235)   -
eCG - 85.0%a(199/234) -
eCG+ECP - 85.5%a(200/234) -
  ECP -   80.4%ab(197/245)   -

【感想】

結果より、CIDRを使用することで、Nellore種牛で春機発動を迎えさせることができましたshine

また、CIDRの抜去時にeCGかECPもしくは両方を注射することでその確率は上昇することが明らかとなりました。

とくにeCGとECPを併用した場合には90%以上の牛が排卵しており、かなりの高確率で効果が期待できますねwink

この報告では3回も使用したCIDRをもちいていますが、これもミソのようで、低濃度のプロゲステロンのほうが高濃度より効果が高いとかLHの分泌が多くなるといった報告があるための処置であるようですflair

ただ3回も使用したCIDRを使うのは衛生面で気をつけなくてはいけないと思いますが…sweat02

今回の報告はET研究所ニュースでも紹介していますので、よければそちらもご覧になってみてくださいhappy01

ET研究所HP

2013年2月 5日 (火)

近頃、血中遊離DNAが気になります

死んだ細胞から血液中に放出されたDNAを「血中遊離DNA」といいます

ガン組織や炎症組織は細胞死が盛んに起こっているためにガン患者や炎症性疾患患者の血液にはこれが多く含まれるそうです

最近、この「血中遊離DNA」が牛の妊娠鑑定に利用できる可能性が報告されました

Early pregnancy diagnosis in dairy cows using circulating nucleic acids

Mayerら、Theriogenology 79, 173-179, 2013

ザックリ中身をまとめると

血清中の「血中遊離DNA」濃度を調べることで、AI後20日で妊娠鑑定ができる(可能性がある)そうです

妊娠も炎症反応おきますからね

うまい!

そこで、、、

同じことをやっても面白くないので、、、

例えば、

夏場のヒートストレスが原因で受胎しない牛や、

分娩後、なかなか受胎してくれない経産牛(特に乳牛)などなど

この「血中遊離DNA」濃度がどうなっているのか調べてみたいです

ただ単純に、受胎しにくい牛としてのマーカーとなるだけではなく、

「血中遊離DNA」の配列を確認し、

細胞死がどこの組織由来であるか予測することで、

その後の飼養管理法など改善すべき点が明らかとなってくるのではないでしょうか

少々飛躍しすぎかもしれませんが(夢を語りすぎる悪い癖があります)、

不妊の原因といなっている炎症などを改善することを目的とした飼料も開発できるかもしれません

また、上のMayerさんの牛の妊娠鑑定に関する研究でも人工授精日、胚盤胞期(7日目)、孵化期(10日目)、伸長期(15日目)などダメもとで「血中遊離DNA」を調べてみると面白い現象が起こっているかも?

2013年2月 1日 (金)

春機発動はまだ?

寒い日が続きますが、牛の発情は来てますか?

ET研には受卵牛として約1200頭の牛がいます(預かり牛含)taurus

これらの発情をいかに早く見つけて受胎させるのがET研職員の腕の見せ所ですrock

しかし、待てど暮らせど発情を見せない困った牛がいますangry

牛は6~12ヵ月齢が春機発動期とされているため、一般的にはそれくらいに発情兆候がみられるはず。

そのため、この月齢を超えて発情が確認されていないものが問題で、スムーズな計画交配が狂ってしまいますshock

栄養不足がその要因として挙げられますが、別に発育が悪いわけでもないのに発情が来ない牛がどうしても出てしまいます。

対処法としてホルモン療法をET研でおこなっています。具体的にはGnRHやeCGの投与、プロジェステロン製剤などのホルモン処置あたりでしょうか。

しかし春機発動が遅れる原因はまだわかっていないことも多いようなので、調査する価値はありそうです。

先ほど挙げたホルモン療法以外のホルモン療法も検討されているようなのでまたの機会に紹介してみたいですね。

その他、雄牛と同居させると性成熟が早まるそうで、どういった仕組みなのか興味深いですねflairただ計画交配は無理そうですがcoldsweats01