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研究 Feed

2012年11月 6日 (火)

妊娠する牛しない牛、何が違う?

同じ品質の受精卵を移植(ET)しても妊娠する牛しない牛がいます。

その差は何でしょう?

いろいろな要因があると思いますが、

この2群で子宮内環境(遺伝子発現)が異なっていることが報告されました。

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Gene expression and DNA-methylation of bovine pretransfer endometrium

depending on its receptivity after in vitro-produced embryo transfer.

Ponsuksili et al., PLOS ONE, 2012

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著者らは発情周期3日目(発情日=0日目)で子宮内環境が大きく異なっていることを示しました(594遺伝子に差あり)。

また、この子宮内環境の差は発情周期14日目では小さくなるようです。

一般的にETは発情周期の7日目ごろ行われます。

すなわち、ET前の子宮内環境を整えてあげることが、

受胎率UPにつながるのではないでしょうか。

まだ遺伝子発現を調べているだけなので具体的にどうすれば受胎率が改善するかわかりませんが、

本当に必要な遺伝子を絞り込めれば

牛だけでなくいろいろな動物の繁殖効率が大きく変わるかもしれません。

以前、我々はET前に自己免疫細胞を子宮内に注入すると、

その後の受胎率が改善されることを報告しました。

この時もいろいろな遺伝子が動いていました。

今回紹介した研究と我々の研究の間で

同じような遺伝子がないか調べてみたいです。

さてさて、子宮に受精卵が成長しやすいフカフカ布団をしいてあげるにはどうすればよいでしょうか?

今後の進捗が非常に楽しみです。

2012年10月22日 (月)

胎盤停滞を防ぐ

近頃かなり冷え込んでおりますdown

これからの季節は早朝や夜間の作業は辛い季節ですねcrying

農家さんによって様々だと思いますが、

牛の分娩が深夜や早朝なんてこともあると思いますsweat01

(分娩介護はこの時期ではなくても大変だと思いますが・・・)

この時間帯は労力がかかるのはもちろんのこと、

分娩に立ち会えず子牛が死亡してしまうこともあると思いますweep

これを防ぐために昼に分娩させるという方法がありますsign03

昼に分娩させる方法としては、夜間給餌や既存のホルモン剤の投与が知られています。

しかし、夜間給餌方法は分娩日まで予測ができないですし、

既存のホルモン剤投与による分娩誘起では、

胎盤停滞(分娩後12時間以上胎盤が排出されない)が

高率で発生するという問題点がありました。

胎盤停滞になると乳生産量の低下や今後の受胎成績が悪化する可能性がありますbearing

少し前になりますが、オキソアラキドン酸という物質が

牛の分娩後に胎盤が子宮から剥離排出される際に働く

シグナル物質だということが世界で初めて発表されました。

placenta 2012(Vol.33(2)106-113)

従来の分娩誘起方法にオキソアラキドン酸の注射を行うことで

胎盤停滞の発生を回避できたそうです。

分娩に30時間以上を要した12頭の牛

無処置6頭オキソアラキドン酸注射6頭)で試験を行ったところ、

胎盤排出率が無処置だと0%だったのに対して

オキソアラキドン酸注射83%という結果が得られたそうですscissors

6_3

深夜の分娩介護による農家さんの労働負担の軽減や新生子牛の生存率の向上、

さらに適切な分娩介護ができずに母牛が死亡することや、

胎盤停滞発生による能力の低下を防げるのではないかと期待されますねshine

2012年10月16日 (火)

クローン牛、「デイジー」

ノーベル賞の影響かあまり話題になりませんでしたが、

ニュージーランドの国営研究機関「アグリサーチ」は、

2日、牛乳アレルギーの原因であるベータラクトグロブリンを

ほとんど含まない乳を出すクローン牛、「デイジー」taurusを誕生させた

と米国科学アカデミー紀要(PNAS←すごいdash)で発表しました

デイジー嬢のお顔taurusはこちらからdownwardleft

http://www.agresearch.co.nz/news/pages/news-item.aspx?News-id=12-10-02-01

論文を読んでみると、人為的に関連遺伝子の働きを弱く(ノックダウン)させてます

あと、アグリサーチお得意のドナー細胞の細胞周期をコントロールしての核移植です

10年前はこの辺の論文を読み漁ったので懐かしい感じがしましたhappy02

たまーにアグリサーチの研究者と連絡を取り合いますが、このような研究を行っていることは知りませんでした

畜産学や医学を前進させるすばらしい成果だと思います

おめでとうございますfuji

ホームページを見てみると今回の実験の一般向けQ&Aを作ったりと見習うところが多くあります

http://www.agresearch.co.nz/news/Lists/news/Attachments/74/Daisy%20Q+A%201%20Oct%2012%20for%20web.pdf

大変立派な研究機関ですflair

2012年10月 2日 (火)

胎児の細胞が母親の脳に・・・

いわゆる「マイクロキメリズム」ですね

胎児の細胞が母親の血液循環に入り色々な臓器へ生着してしまうことは昔から言われていますが、

何とsign03

胎児細胞は母の脳関門をも通過していることが報告されました

マウスを使った「マイクロキメリズム」で有名なネルソン博士ですが、

今回、亡くなった59名の女性の脳を検査し、その63%で「マイクロキメリズム」を確認しました

この「マイクロキメリズム」、非常に興味深い現象ですが、

母親の免疫系に影響を与えてしまうのではないでしょうかsign02

例えばですが、二人目の子供を妊娠しにくい女性がいらっしゃいますが、

「マイクロキメリズム」による免疫系の変化が原因の一つではないかと勝手に妄想していますtyphoon

また、逆に免疫寛容により妊娠しやすい体質になってもいいような・・・

その他、男児細胞マイクロキメリズムをもつ母親は、

乳癌の発症率が低いとか、

逆に結腸癌の発症率が高いとかあるそうです

今回の発見はアルツハイマー病やパーキンソン病などの研究に応用されるとのことですflair

2012年9月27日 (木)

精子を作る

今日は精子に関するお話ですscissors

精子は分化と分裂により、精祖細胞から精母細胞、精子細胞を経て形成されます。

Photo

精巣内に精子の元になる精祖細胞はあるのですが、

セルトリ細胞(精子形成を促すための栄養や成長因子を分泌する)が

働かない精子形成不全により不妊であるマウスの精巣組織を体外培養し、

精子生産に成功したことが先日発表されましたflair

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22984182

この精子を顕微授精によってマウス卵子に注入したところ、

発育や繁殖能力に全く問題のない、正常な子供が生まれたそうですchick

このような研究は昔から行われてきましたが、

いつか精子形成も卵子形成も受精も全て体外で行われ、

効率の良い生産システムが開発されるかもしれませんねsign03

2012年9月17日 (月)

思い出の写真

みなさん、これは一体何の写真か分かりますか?

Photo

花火のような・・・?私としては縁日のヨーヨーの柄にも見えます(笑)

これは2種類の染色液を使って胚盤胞というステージの胚を染色した写真ですscissors

↓こんなステージです。(大体受精後7~8日目です)

Photo_2

青く染まっている部分が将来胎子になる部分で、ピンク色に染まってるところが胎盤になる部分ですflair

この写真は私が始めてこの染色方法を教わって、染色を行ったときの写真ですwink

この染色法では、2種類(ピンク)に染め分けをしたいのに失敗すると青一色になってしまったりしますdown

キレイに染めるためには胚を染色液につけておく時間が重要だったりしますgood

しかし、初めてにしてはとてもキレイに染色できましたshine

きっと私の腕が良かった指導して下さった方の教え方が上手だったのでしょうbleah

今でも見ると思わずうっとりしてしまう思い出の写真でしたcamera

2012年9月11日 (火)

5-day CO-Synch + CIDR program

現在、北米で流行ってる定時人工授精(TAI)用の発情同期化法ですね

今年の米国受精卵移植学会では、この発情同期化法でセッションが設けられています

以下に方法を示します

Dsc_1588

5日間という短い処置期間がポイントで、

CIDR抜去により卵胞が発育し、

エストロジェン濃度がタイミング良く上昇するため卵子の質を高めるよう

最近では7-day CO-Synch + CIDRより受胎性が高いと評判です

CIDRを抜去して72時間目のAIが適期(受胎率65~80%で、60時間目のAIでは57%に低下)

難点はPGの12時間間隔2回投与

しかし、本当によいものであれば、がんばりますね(合成PG製剤も2回投与が必要???)

私が知っている限り、「1 Shot PG法」に次ぐ簡単処置法です

シンプルでGood!

2012年9月 4日 (火)

卵胞が少ない牛はAI後の受胎性が低い

「Low numbers of ovarian follicles ≥3 mm in diameter are associated with low fertility in dairy cows」

Mossa et al., J Dairy Sci (2012)

Evans博士に論文をいただきました

いつもお世話になってます

たまには真面目な本業ネタをご紹介

【方 法】

306頭のホルスタイン種経産牛を供試して、

3mm以上の卵胞数が15個以下(少)16~24個(中)および25個以上(多)で3グループに分類

卵胞数は発情日から平均して4.6日目(第1卵胞波)でカウント

次の発情周期でAIして受胎率を調査

【結 果】

分娩後最初のAIにおける受胎率は31%(少)45%(中)および38%(多)の間に有意差あり)

繁殖シーズン全体で受胎率をみると84%(少)88%(中)および94%(多)の間に有意差あり)

【感 想】

卵胞数が少ない牛の受胎率が低くなるとの報告です

AI前の発情同期化と併せて卵巣を確認することでその後の受胎性をおおまかに予想できそうですね

特に貴重な精子を使う場合の判断材料になりそうな。。。

また、高価な超音波装置(3mm以上の卵胞を調べているので結構小さいものまで見えてますね)がなくても

(ある程度、)卵胞数は卵巣の大きさに比例するので、

卵巣の触診のみでも同じような傾向がでるかも?

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Photo

upwardright卵巣の大きさで卵胞の多い少ないが判断できそうですよね(写真は屠場由来卵巣)

2012年8月28日 (火)

男性用ピル候補物質「JQ1」

8月17日米科学誌CELLで発表されました

癌抑制化合物「JQ1」に精子数減少と運動能を低下させる効果があることをダナ・ファーバー癌研究所が発見

この「JQ1」が精巣内に入ると精子形成に重要なタンパク質「BRDT」に結合し、

精子形成を邪魔するようです

また、この「JQ1」

(雄マウスの)腹腔内に毎日投与しても性腺刺激ホルモンや男性ホルモンバランスに影響を及ぼさないのが特徴

従って、投与中でも雄の性行動は正常に行われるそうで、

さらに投与を中止すると精子形成が再開され子供も生まれます

さすが、CELLの論文!

社会貢献度がハンパない!(うまくいけばですが)

あと、個人的には「BRDT」にビビッときました

精子の品質の良し悪しに、この「BRDT」遺伝子の一塩基多型(SNP)が影響してないですかね?

調べてみたい。。。(牛にBRDTがあるかわかりませんが、、、ヒトにはあるらしいです)

話は変わりますが、普通の(女性用)ピルはプロジェステノーゲンとエストロジェンからできているので

飲むと排卵を抑制して避妊できるわけです

我々が牛の発情同期化に使う黄体ホルモン製剤PRIDと似てますな

2012年8月27日 (月)

卵巣の若返り!?

ヒトの不妊治療を行っているクリニックが、

閉経前後の女性の卵巣に自身の皮下脂肪から抽出した間葉系幹細胞を注射し、

卵巣機能の改善を図る臨床研究を厚生労働省に申請をしたというニュースがありましたmemo

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2004A_R20C12A8CR0000/

間葉系幹細胞は、間葉系に属する細胞(骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞)へ

分化能を持つとされる細胞のことで、骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されています。

この研究では、機能の低下した卵巣に間葉系幹細胞を移植し、

卵巣の血流を増やすことで衰えた卵巣機能の改善を目指しており、

今後60歳未満の女性5人を対象に研究を進めていくそうです。

すでにラットを用いた研究では、移植後に血管が新生し、卵巣機能の改善が確認できたそうですsign03

ウシでも応用できるようになると・・・機能低下により「し~ん」とした卵巣が・・・

Photo

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こんなふうになるかもsign02

※注.画像はイメージです

全ての生物において老化は避けられないことですが、いつか全ての女性&雌に

「あきらめないでshine」(某CMの名ゼリフ)

と言える日が来るのでしょうかvirgo