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研究 Feed

2014年8月13日 (水)

精子の記憶

おもしろい記事を見つけました!taurus

身の危険を感じると、その「記憶」は精子を介して子孫に伝えられる――。マウスを使った実験で、個体の経験が遺伝的に後の世代に引き継がれる現象が明らかになった。米国の研究チームが科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に発表した。

 実験は、オスのマウスの脚に電気ショックを与えながらサクラの花に似た匂いをかがせ、この匂いを恐れるように訓練。その後、メスとつがいにして、生まれてきた子どもに様々な匂いをかがせた。

 すると、父親が恐怖を感じたサクラの匂いのときだけ、強くおびえるしぐさをみせた。孫の世代でも、同様の反応が得られた。

 父マウスと子孫の精子のDNAを調べると、嗅覚(きゅうかく)を制御する遺伝子に変化の跡があり、脳の嗅覚神経細胞の集まりが大きく発達していた。これらの変化が親の「教育」によるものでないことを確かめるため、父マウスから精子を採り、人工授精で子を育ててその脳を調べると、同様の変化が見られた。

 生物の遺伝情報はDNAに刻まれて親から子へ引き継がれるが、生活習慣やストレスなど、後天的な要因で遺伝子のスイッチの入り方が変わることが知られている。研究チームは「今回の成果は、ある種の精神神経疾患の解明につながる可能性がある」としている。

マウス以外の動物にもあてはまるなら・・・gemini
種雄牛に優しくしておかないと、子どもがみんな人間嫌いになるってことでしょうか?


引用:朝日新聞デジタル 2013年12月4日
文献:Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations
Brian G Dias, Nature Neuroscience(2013)doi:10.1038

2014年7月25日 (金)

短角飼いはじめました

和牛といえば黒毛和種のことをいうことが多いと思います。
ですが和牛と呼ばれるものには他に日本短角種、褐毛和種そして無角和種があります。
これらは和牛と称されていますが、黒毛和種とは見たやも肉質など様々な面で異なっています。

最近ET研究所では試験的に日本短角種を飼いはじめましたflair
日本短角は現在の岩手県の辺りで飼養されていた南部牛にショートホーン種が交配されて改良の後にできた種らしいです。毛色が赤褐色であり、夏は放牧で、冬は牛舎で飼養される(夏山冬里)点が特徴的です。
東北地方の厳しい環境に適応するよう改良された品種のため、きっと北海道でもその能力を発揮してくれると見込んでやってきましたship
繁殖に関しても特徴的であり今では珍しく雄牛も放牧することで自然交配するそうです。そのため受胎性、そのほか連産性などの繁殖性も良く、さらに配合飼料がなくとも増体が良いなど経済的な種でもありますmoneybag

また日本短角はいわゆるサシの少ない赤身の肉ながら旨みがあるのが特徴であり、短角の故郷、岩手の人も絶賛していましたhappy01

こんな可能性に満ち溢れた日本短角種、今後の進展に期待ですshine

2014年6月12日 (木)

もっと使おう!膣鏡!

 近年フリーストールの牛舎が増えてきたと言われておりますが、昔ながらのタイストール方式の繋ぎ外牛舎も多く見受けられます。人工授精にしろETにしろ、事前の発情観察はかなり重要であり、最も鋭敏な発情の指標は乗駕許容行動(ステンディング)の観察であるわけですが、繋ぎ飼いでは観察ができないため、その他の発情兆候からAI適期を見極める必要があります。

 繋ぎ飼いでもステンディング見たくバシっと分かる発情兆候の指標が知りたい!!そんなアナタのニーズにピシャリと答えるような論文が先日出されました!!

原題:Relationships Between the Appearances and Changes of Estrous Signs and the Estradiol-17β Peak, Luteinizing Hormone Surge and Ovulation During the Periovulatory Period in Lactating Dairy Cows Kept in Tie-stall

和訳:排卵前期におけるタイストール飼養乳用種経産牛の発情兆候の発現と変化およびE2ピークとLHサージおよび排卵の関連性

著者:Sumiyoshiら(東京農工大)

出典:Journal of Reproduction and Development Vol. 60 (2014) No. 2 April p. 106-114

材料および方法

供試動物:ホルスタイン種経産牛 10頭(平均3.8歳、2.3産、乳量約9.000 kg)

実験手順

・排卵から黄体退行開始まで2日置きに以下の項目を調査

・子宮卵巣の直腸検査および超音波検査

・血中E2濃度

黄体退行開始から次回排卵まで6時間おきに以下の項目などを調査

・子宮卵巣の直腸検査および超音波検査

・外陰部と膣の発情兆候(膣鏡)

・血中E2、LH、FSH濃度

外部兆候の強度について以下のようにスコア化した。

1_2

主な結果

・ほとんどの発情兆候が血中E2濃度増加に伴い強まり、低下するにつれて減弱したが、外陰部の充血、粘液漏出については有用な観察結果は見られなかった。

・目視、直検査で分かる発情兆候(外陰部の腫脹、子宮の状態)と膣鏡で分かる発情兆候(頚管外口の状態、粘液粘度)に分けて解析したところ、どちらもE2濃度と相関があった。

・子宮膣部の弛緩の最大値は全ての牛で排卵前6-18時間であり、他の指標よりも明瞭に観察することができた

考察より

 過去の報告では牛の授精適期は排卵前6-24時間であり、子宮膣部の弛緩は授精適期を見極める最も適切な発情兆候であると考えられる。

 子宮膣部の弛緩と聞くと「?」となる気もしますが、膣鏡を入れた際に見える外子宮口周辺を囲む層状のしわの緩みを指しており、論文中には分かりやすい写真が添付されています(フリーでPDF落とせるので見てみてください!!)。

 「直検なんて当てにならん!俺は発情は膣鏡で見るんだ!」とおっしゃっている先生もいらっしゃるのですが、改めて膣鏡の有用性を感じましたconfident

2014年5月22日 (木)

7日にする?5日にする?

先日読んだ論文を掻い摘んで紹介いたします。

原題:Comparison of follicular dynamics and hormone concentrations between the 7-day and 5-day CO-Synch + CIDR program in primiparous beef cows

(和訳:初産肉用種牛におけるCO-SynchとCIDRを組み合わせた排卵同期化プログラムのCIDR留置機関7日間と5日間での卵巣動態とホルモン濃度比較)

著者:Bridges et al.

出典:Theriogenology 81 (2014) 632-638

緒言:分娩後および未経産の肉用種牛において既存の7日間CIDRを留置するCO-Synch+CIDRプログラムよりも、5日間に期間を短縮したほうが良好な受胎率が得られると報告されており、この2つの方法がそれぞれ卵巣動態およびホルモン濃度に与える影響について調査した。

方法:下図参照。定期的に卵巣動態を超音波で観察すると共に採血し、ホルモン(E2・P4)を測定。

Photo結果

Photo_2・7COでGnRH①で排卵しなかった群のみがPG投与後60時間までのE2濃度および12日間までのP4濃度が低くなった。

コメント

5CO処置による受胎性向上の根拠としてE2ピークへの影響およびPG投与後のE2濃度P4濃度へのGnRH反応性との交互作用を示しております。

7CO法は1週間間隔で行え実用的である上に、卵胞ウェーブや黄体のPGに対する反応性を考慮すると理にかなっているように見えますが、汎用性は5COの方が高い可能性があります。

2014年5月 1日 (木)

キスペプチンってどうなんよ?

 動物の繁殖に関わっている方ならGnRHを投与したことはおありかと思います。

 GnRHは排卵促進剤として主に用いられ、LHの一過性の過剰分泌を起こしたり、またFSH・LH双方の拍動性の分泌を引き起こす非常に大事なホルモンですが、このGnRHの分泌をさらに上位で支配しているのがキスペプチン(メタスチン)です。

 このキスペプチンが実際牛の繁殖で使えたりしないのかなぁと常々思っていたのですが、最近牛と同じ反芻動物で、一年を通して繁殖が可能であるシバヤギに、キスペプチンの治験薬を投与し、卵胞発育、黄体機能、生殖ホルモンの分泌に与える影響について検証した論文が出ました。

題:Ovarian and Hormonal Responses to Follicular Phase Administration
of Investigational Metastin/Kisspeptin Analog, TAK-683, in Goats

(和訳:メタスチン/キスペプチン作動性治験薬の卵胞期投与のヤギにおける卵巣と内分泌反応)

ジャーナル:Reprod Dom Anim 49, 338–342 (2014); doi: 10.1111/rda.12283

著者:Y.Goto et al.(東京農工大)

材料および方法:下図参照

Photo_2

結果:

・投与6h後のLH・FSH濃度が試験区で増加した一方、E2濃度は投与12時間後以降対照区が高くなった。

・排卵時期は対照区平均に対し試験区2頭で遅延し、1頭で早まった(もう一頭はデータなし)。

・排卵数に差は見られなかったが(対照区:4.7個、試験区:3.3個)、試験区の方が対照区より排卵した卵胞の最大直径が小さくなった(対照区:5.4mm、試験区:3.8mm)

・排卵②以降のP4濃度が試験区で低下した。

 個人的にはGnRHより上位の中枢を叩くことにより、より鋭敏に排卵性の刺激が誘引できるのかなぁと考えていたのですが、そういった結果は得られていないようで、むしろ投与後のE2濃度低下、排卵以後のP4濃度低下といったネガティブエフェクトが目立つという印象を受けました。投与量等まだ検討課題はあるかもしれませんが、生殖内分泌は一筋縄ではいかないということを改めて痛感した論文でしたthink

2014年4月 8日 (火)

頑張る頑張れない。精子くん。

そこのトロい、精子くん!!

もっと早く泳いで、早く卵子のもとへ辿り着こうとしてないかい?

その努力、無駄無駄無駄無駄無駄!!
だって、君の泳ぐスピードは、すでにもう、遺伝子という変えようもない事実に支配されているのだから…。

Science、2014.04.04のAngus Chenらの記事で面白い記事がありましたthink

題名「How to Make Speedy Sperm」

訳:全ての精子が平等ではない。Michael Phelpsのように速く泳ぐ精子もいれば、80歳のおばあちゃんのように遅く泳ぐ精子もいる。
最近、マウスを使ってそのスピードの違いはDNAに原因があることを明らかにした。

プロタミン(精巣内のタンパク質)を発現させる遺伝子が欠如している精子は、より滑らかに、スピーディに泳ぐことができる。そして、より早く卵子に到着し、受精することで、雄親の能力高い精子が、子にも遺伝されることになる。

つまりは、交雑種であるマウスでも、北島こうすけのようなチャンピオン水泳選手の精子をつくりだすことが可能となるのである。

けど、まあ、スピード感あふれる精子でも、受精能が優れてなければ、元も子もないんですけどね。。。bottle


この精子スピードを支配する遺伝子の研究は、今後も期待大ですねtaurus

2014年3月27日 (木)

嚢腫の牛のオブシンク

 最近場内で移植前の牛の黄体確認をする際に、卵胞嚢腫で移植を中止するケースがよくありますgawk

 GnRH等の排卵促進剤の注射一本で直ればいいのですが、それだけでは直らないケースも度々あるわけで、プロジェステロン除法剤を入れてみたり、様々な方法を試されている方も多いかと思います。

 文献をあさってみたところ、比較的簡単な方法で成果が認められた報告がありましたので、一部をご紹介いたします。

タイトル:Comparison of Two Different Programmes of Ovulation Synchronization in the Treatment of Ovarian Cysts in Dairy Cows(和訳:乳牛の卵胞嚢腫の処置における2つの排卵同期化法の比較、要約を一部省略し参照)

ジャーナル:Reprod Domest Anim. [Epub ahead of print]

著者:N Gundling ら

目的:異なる二つの排卵同期化法の卵胞嚢腫の治癒および繁殖機能に対する効果の検証

材料および方法

実験群:下図参照

Photo

*処置後20-24時間後に授精

供試動物:ホルスタイン種経産牛(群1、群2ともに65頭)

結果:下表参照

表1.初回処置による嚢腫治癒率(%)
群1 66.2%
群2 23.1

表2. 授精回数累積受胎率(%)
  1回目 2回目 3回目
群1 66.2 76.9 83.1
群2 40 50.7 60.6

*群2と対照区では差はなし。群1と群2で有意差(P<0.05)

妊娠牛1頭におけるコスト(ユーロ)
群1 352.44
群2 484.59
対照区 333.77

 以上の通り、嚢腫の治癒、それ以降の繁殖効率、さらにはコスト面においても良好な成績が得られています。試してみる価値はありそうですeye

2014年3月20日 (木)

第1ウェーブ>第2ウェーブ?

 牛の繁殖に携わっている方であれば、牛には1つの発情周期中に2-3回程度の卵胞発育の波(卵胞ウェーブ)があり、実際に排卵に至るのは後者だということは周知のことかと思いますが、最近この卵胞ウェーブについて、帯広畜産大学の研究グループより興味深い論文が出ましたので簡潔にご紹介いたします。

Evidence that the dominant follicle of the first wave is moreactive than that of the second wave in terms of its growthrate, blood flow supply and steroidogenic capacity in cows

(和訳:発育率、血流、ステロイド合成能の点において第1波主席卵胞の方が第2波主席卵胞より証明)

著者:三浦 亮太朗ら

ジャーナル:Animal Reproduction Science 2014 Mar;145(3-4):114-22

緒言

 第1ウェーブの卵胞は黄体が未形成の時期に発育を開始するが、第2ウェーブの卵胞は黄体形成後の高プロジェステロン(P4)環境下で発育し、ステロイド合成能、血卵胞への血流は第1卵胞ウェーブが高いという報告がある。しかしどの報告も第2ウェーブの開始時点が不明瞭であり、第1ウェーブと第2ウェーブの発育に与える相違点がはっきりと評価されているわけではない。本研究では第1卵胞ウェーブが発育し、黄体がしっかりと形成された後、排卵促進剤により第1ウェーブの卵胞を排卵させることで、その後の卵胞発育を高P4環境下で発育する第2卵胞ウェーブのモデルとし、卵胞の直径、卵胞への血流、ステロイドホルモン合成、卵胞発育に関わる遺伝子発現について評価した。

 

結果

 卵胞の直径は第1波が大きく、卵胞への血流は、第1ウェーブの方が血流量が多く、発育に伴って増加したものの、第2ウェーブでは大きな増加はなかった。卵胞液中のエストロジェンおよびその元となるアンドロジェンは第1ウェーブの方が多く、LHレセプターの発現量は第1波卵胞が多かった。

まとめ

これらの結果は第1卵胞ウェーブの方が第2ウェーブより活性が高いことを示している。

  この結果を見て最初に感じたのは、「だったら第1ウェーブ発育中に黄体退行薬を投与して排卵させればいいんじゃないか」ということでしたが、論文中の考察によると、卵胞発育中のP4濃度が低い場合、続く発情期間中の子宮内のPGF2αが増加してしまうなどして、第1卵胞ウェーブの受胎率は第2ウェーブに劣るそうです。一筋縄ではいかないものですねthink

 個人的には卵胞中の卵子そのものの活性にはウェーブによる違いはないのかなぁと気になりましたeye

2014年3月13日 (木)

フェロモンはオレンジの香り

先月末、雑誌Natureのニュースに、東京大学の研究グループによって、多くの雄のフェロモンの中から、雌の繁殖を制御する物質が特定されたという記事が載っていましたsign03

ニュース原文はこちら

 雄ヤギの香りは雌に排卵を引き起こすなど、繁殖能力を刺激することが知られていましたが、多くの研究者たちはこれが「プライマーフェロモン(雌のホルモン分泌に影響を与えるフェロモン)」であると考えていたものの、実際にこの「雄効果」を与える物質が何かは分かっていませんでしたgawk

 この研究グループは、まず吸着剤を含んだ自作の帽子を1週間雄ヤギにかぶせ、そこから芳香のある物質を回収し、18種の化学物質に分離しました。

 そしてその化学物質それぞれを雌ヤギに嗅がせ、脳内の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の活動を電気的に記録することで、繁殖能力に影響を与える単一の物質「4-エチルオクタナール」の分離に成功しましたbearing

 得られる産子のほとんどがAIもしくはETに由来する牛では、雌と雄が同居するような状況はほとんどありませんが、牛でも同様にこのような「雄効果」をもたらす物質が特定できれば、繁殖能力の向上に寄与するかもしれません。

 ところで、この新たに見つかった物質「4-エチルオクタナール」はオレンジの香りがするらしいです。

確かに爽やかな柑橘系の香りをまとった男性はもてそうだなーと思うのはわたしだけではないのではないでしょうか?人の領域でもこんな素敵な物質が早く見つかってほしいなーと思いますsign03

2014年3月 6日 (木)

繁殖寿命を制御する遺伝子

最近興味深く読んだ論文をかいつまんで紹介いたします。

題:Loss of the pro-apoptotic BH3-only protein BCL-2 modifying factor (以下BMF) prolongs the fertile lifespan in female mice(和訳:アポトーシス促進性のBH3-onlyタンパク質であるBMFが雌マウスにおける繁殖寿命を延長させる)

著者:Seng H. Liewら

ジャーナル:Biology of Reproduction in Press. Published on February 26, 2014 as DOI:10.1095/biolreprod.113.116947

緒言:

女性の繁殖寿命は卵巣内に原始卵胞として貯蔵されている卵母細胞の数に影響される。

貯蔵されている原始卵胞で、発育したもののほとんどは退行し、実際に排卵までにいたるのはごくわずかである。

胎生期および出生後の卵巣発育における細胞死(アポトーシス)が卵巣内における原始卵胞数を決める重要な役割を果たしているが、個々のアポトーシス制御因子の役割はよくわかっていない。

 アポトーシス促進タンパク質の一つであり、精巣において生殖細胞のアポトーシスを引き起こすと考えられているBCL-2-modifying factor(以下BMF)が生体卵巣内で維持される原始卵胞数と繁殖寿命の長さの決定にどのような役割をもつかを調査するため、遺伝子改変マウスを用いて実験を行った。

方法:

・野生型マウスおよびBMF欠損マウス(以下BMF-/-)それぞれについて、日齢20、100、200、300、400、545で各6頭のマウスを使用し、卵巣を回収。鏡検し、卵胞数および退行卵胞数を計測

・20、150、300日で過剰排卵処理を実施、排卵誘起した後、卵管より卵子を回収し、卵子数を評価

・野生型とBMF-/-マウスそれぞれを野生型オスと同居させ、18ヶ月齢までの産子数、分娩頻度、産子の健康状態を記録。

結果:

BMF-/-マウスは

・原始卵胞数が野生型マウスに比べ、出生後20日目では変わらなかったが、100、200、300、400日で多くなった。

・退行卵胞数が20日目まで有意に少なく、以降の日齢では野生型と変わりなかった。

・過剰排卵処理により得られた卵子数は野生型マウスと変わらなかった。

・繁殖能力について:下表参照

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考察:本研究はBMFが成体の繁殖適齢期を通して卵巣内において維持される原始卵胞数を決定する重要な役割を果たしており、したがってBMFの働きを抑制することで、卵巣内に維持される原始卵胞数が増加し、女性の繁殖寿命を延長させることができるかもしれない。

 この報告はマウスについての報告ですが、牛でも同様の遺伝子改変動物が作出できるなら、産子数の増加が見込めるかもしれません。

 また、全農ET研究所では黒毛和種供卵牛に対し頻回のにわたる受精卵回収を行っています。採卵を繰り返し行っていくうちに品質の高い受精卵がほとんど回収できなくなってきますが、本研究と同様の形質を持った牛ならば、安定して長期間にわたり高品質の受精卵が回収できる事も見込まれます。

 調べた限りでは牛についてはまだBMFについての報告はないようですが、牛でも同様な遺伝子が見つかれば、高い繁殖能力を持った牛の選抜につながりうるかもしれませんね。