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研究 Feed

2014年2月 6日 (木)

寒さと栄養状態

 最近の寒さ関係の話題が多いですが、昨日に引き続き寒さ関係の話題です(キリッ)!

 我々全農ET研究所の事業は「受精卵」で成り立っており、受精卵が採れなければ何も始まりません。

 我々に受精卵を提供してくれる黒毛和種の雌牛たち。彼女らの生産限界温度は-10~30℃らしいのですが、にも関わらず今日の上士幌の気温は何と-8~13℃!!このような極寒状態の中で彼女たちの栄養状態はどのような状況なのかを把握するために血液検査を行ったところ、以下のような結果が得られました。

Table1
 タンパク質の代謝を表すBUNが低く、血糖値(Glu)が高くなっています。

 恐らく餌にタンパク質が十分含まれておらず、かつこの寒さによって、ストレスを受けると分泌されるホルモン(コルチゾール)の働きにより血糖値が上昇したものと推察しています。

 検査する前は、体温を増加させるために血糖を消費しまくってるだろうから血糖値が下がって、かつタンパク質もエネルギー源として使われているだろうからBUNは高くなっているんじゃないかと想像していたのですが、真逆の結果となりましたcoldsweats02

 摂取した栄養分と生産のために消費した栄養分のバランスを診断する方法として代謝プロファイルテストと呼ばれる方法があります。今回はかなり簡易的なものですが、その奥深さを感じるいい機会となりましたconfident

2013年12月24日 (火)

PGを毎日投与すると・・・

最近興味深く読んだ論文を紹介させていただきます。

Influence of repeated dinoplost treatment on ovarian activity in cycling dairy cows

Kazuyuki kaneko, Nobuaki takagi

(Theriogenology 2013 article in press)

目的

 分娩後の牛は長期にわたって血中のPGFM濃度(PGF2αの代謝物)が高く、人工的に子宮内を細菌感染させた牛でも血中PGFM濃度は高くなることが知られている。そこで、長期にわたるPGF2α投与が卵巣機能にどのような影響を与えるかを調査した。

材料および方法

供試動物:繁殖周期が正常な、ホルスタイン種経産牛

実験内容:自然排卵した日をDay 0とし、Day 1からDay 21までPGF2α製剤(プロナルゴンF 5 ml)を投与した。Day 30まで毎日卵巣観察および採血を行い、得られた血液によりP4濃度を測定した。

結果(ダウンロードファイル参照)

1.gifをダウンロード 

  結果の通り、PG投与区では正常な繁殖周期は見られず、黄体形成が不十分であった他、少数ではあるものの卵胞嚢腫となる個体も見られました。

 子宮内感染と卵胞嚢腫の発生には相関があることが知られており、個人的には子宮内感染が引き起こしうる種々の影響の中でもPGF2αの上昇という内分泌的な素因によって卵胞嚢腫が引き起こされうるということが非常に興味深く感じられました。

 頻回の排卵促進剤の反応しないような牛に対しては、子宮内膜の状態を改めて検査し、内膜炎であるならば治療を施すことが必要な場合も多いのではないかと考えられます。また、ひょっとするとCOX2阻害剤投与によってPGF2αの産生を阻害することで、どんな治療にも反応しなかった卵胞嚢腫が治るといったことも起こりうるかもしれません。

2013年12月20日 (金)

ホルモンの作用

先日、ラジオから流れたニュースですが、東京大学の研究グループが自閉症の治療にオキシトシンが有効であることを発見しましたflair
ラジオを聞いた研究所の職員は皆、オキシトシンというワードに反応しましたが、それに関わる言葉が聞きなれないものばかりで戸惑っていましたeye
ニュースを要約すると、オキシトシンの点鼻薬を服用すると自閉症では低下している脳の機能が改善し、対人コミュニケーション障害が改善されるというものでしたsign01
我々が耳にするオキシトシンとは泌乳を促したり、分娩の際に子宮を収縮させるなど牛の分野とも深い関わりのあるホルモンの1つです。
それが脳の機能やコミュニケーション障害とも関連するということに驚きましたcoldsweats02
また調べてみるとオキシトシンと人の感情に対する効果の研究なども行われているようで、オキシトシンを投与すると他人を信頼しやすくなるとか、感情が穏やかになるという記述もみられました。
ということは泌乳中や分娩時の牛は穏やかで、人に対して友好的になるのでしょうか?酪農家の方々に乾乳期と泌乳期で性格が違うかどうかアンケートしてみたいですねpencil

20110114221

ホルモンというものは非常に不思議でわからないことも多いようです。オキシトシン以外にも日頃使用しているホルモン剤も、もしかすると脳機能や感情に影響しているのでしょうか?
ET研でも様々なホルモン製剤を使用するので、もしうちの牛に特徴的な性格があったら、新たな発見があるかもsign02


2013年12月 3日 (火)

最強の♂のカタチ

論文漁りをしていて、最近面白い記事を発見したので、ここで紹介させていただきますtaurus

海の生物で「ウミウシ」という、とてもカラフルなナメクジみたいな生き物がいます。
(私はこの生き物が大好きで、大学時代はよく海に潜ってウミウシ探しをしたものですwatch

このウミウシのオス、実はすごいんです。
すごい繁殖形態を持ってるんです。

沖縄のウミウシは、disposable penis(使い捨てペニス)を持っています。

メスとの性行の後、15~30分以内にpenisを捨てます。

そして、24時間以内に新しいpenisが生えてくるらしいです。


なぜ、このような形態をとっているのかは不明らしいですが、常に新しいものに更新していくこの生態は、子孫繁栄の必死さが伝わってきます。


すごい、まさにウミウシはオスの最強型・・・。

以下にその記事のURLを載せておきます。
http://news.sciencemag.org/2013/02/scienceshot-sea-slug-sports-detachable-penis

2013年11月26日 (火)

伸長胚を用いた雌雄産み分け

 先週とある新聞に授精後14日目の伸長胚(長さ0.5 mm以上)の一部を直接切り取り、性判別を行うという記事が載っていました。

 方法は実体顕微鏡下でメスを用いて伸長胚の一部を切り取って雌雄を判別するというもので、従来法に比べ簡便にできるというものです。

  実際にETも行っており、凍結保存した伸長胚3個を3頭に移植したところ、うち2頭で受胎し、1頭はすでに出産しているとのことでした。

  残念ながら実際の移植方法等の詳しい情報は記事には記載されておりませんでしたが、個人的には「牛のETに用いるのは授精後7日目周辺の胚」という思い込みのタガが外され、衝撃的でした。

 現在雌雄産み分け技術といえば性選別精液の人工授精やバイオカッター等で胚の細胞を切り出し性判別を行う方法等がありますが、いずれにしろ高価な機器や一朝一夕で身につかないような技術が必要です。

 誰でも、どこでも、安くできるというポイントは現場に生きる研究を行う上で欠かせないものであり、そのポイントを抑えた上で視点を変えてみることの大切さを改めて感じさせられましたconfident

2013年10月11日 (金)

黄体と卵胞の同居

少し前の話になってしまいますが、先月の12日から14日、東京農工大で開催された「第106回日本繁殖生物学会大会」に参加して参りましたsign01

 その際特に筆者自身が興味深く感じた発表についてご紹介させていただきます。

 

 新ETシステムでは移植1~2日前に「黄体検査」を行い、黄体がきちんと形成されているか、左右どちらにあるかを超音波診断器でチェックするわけですが、この際黄体がある卵巣に卵胞(エコーで黒く抜ける部分)がある場合とない場合があることにお気づきの農家の方もいらっしゃるかと思います。

1

Photo_8

 

この時見られる大きな卵胞は卵胞発育の第一波でできた主席卵胞であり、この卵胞が黄体と同じ卵巣にあるかないか(図2)により人工授精の成績に極端に影響が出るという発表がありましたsign01

2

Photo_9

「黄体と同側の卵巣に位置する第1卵胞波主席卵胞の存在はウシの受胎率を低下させる」

三浦 亮太朗ら(帯広畜産大)

目的: 第一卵胞波が繁殖生理や受胎性に与える影響はよく分かっていない。

→第一卵胞波主席卵胞が黄体と同一卵巣内に共存するまたは共存しないことが人工授精での受胎率にどのような影響を与えるのかを検証した。

結果: 

総頭数

(総受胎率)

114頭(57.0%)

黄体と

第一卵胞波

非共存(60頭)

共存(54頭)

AI受胎率

72.2%
(経産:62.1%,

未経産:84.0%)

40.4%
(経産:27.6%,

未経産:55.6%)

 

上記の表のように第一卵胞波主席卵胞と黄体が共存する場合はそうでない場合と比べて極端に受胎率が低くなった。

また、血中プロジェステロン濃度は排卵後3日目で非共存群が高くなり、それ以降(6,12日目)は差がなかった(経産牛のみのデータ)。

 

・・・といったように、受胎率が30%近くも異なるという衝撃的なデータが出ていますthunder

  研究所職員が取ったデータでは、ET前の黄体検査で第一卵胞波主席卵胞が黄体と同一卵巣内に共存するか共存しないかにより受胎率に差はありません。

 これは今回紹介した発表において、6日目以降のプロジェステロン濃度に差がないことからも頷けます。

  つまり、第一卵胞波主席卵胞は黄体が形成されつつある初期の段階で悪さをし、黄体がしっかりと形成された後はあまり影響がないのではないか、ということです。

  もし授精後初期段階で主席卵胞が排卵した卵胞と同側に見られるなら、CIDRなどのプロジェステロン製剤の投与が特に有効になるのではないかなぁ、と感じました。もしくはいっそ卵胞を吸引 or 破砕してしまうのも一つの手なのかもしれません。

2013年9月17日 (火)

CIDRを7日間留置するのと5日間留置する違い

ウチの新ETシステムでは、PRIDを9日間留置しています。

参考までに、以前読んだ論文ですが、こういった報告があります。

(a)CIDR in+PG(Day-7)、GnRH(Day-5)、CIDR out+PG(Day0)

(b)CIDR in+GnRH(Day-5)、CIDR out+PG(Day0)

の2種類で同期化して、発情発見してからAI,あるいはTimed AIで

ホルスタイン未経産牛の受胎率を比べたのだそうです。

発情発見してAIをした場合は、aの方が受胎率が良かったそうです。

Timed AIした場合は、aとbで受胎率に差はなかったようです。

そしてaの方法で、発情発見してAIした場合が最も受胎率が高かったです。

この論文から判断すると、手間と時間は増えるものの、5日間よりは、7日間CIDRを留置して

発情を発見してAIした方がいいということになります。

(9日間留置、あるいはPRIDとの比較はありませんでした。)

でも、本文にもありますが、肉牛で最初にPGやGnRHを打たずに受胎率を比較した場合、

5日間留置の方が受胎率が高いという報告もあります。

品種の差や、最初の薬剤を打つ打たないで変わってくるようですが、

こんな報告もあるということで、参考までに紹介してみました。

(H.I.Mellieon Jr. et al  Theriogenology 78 (2012) 1997-2006)

 

 

2013年9月16日 (月)

雄雌

哺乳類の性は性染色体XとYの組み合わせにより、決定されています。(雄→XY、雌→XX)

そして雄と雌の差が初めて生じるのは、妊娠中期頃の胎仔の体内の

生殖巣原基という組織が精巣、卵巣になることで体が雌雄へと形作られますtoilet

この生殖巣原基が精巣、卵巣のどちらかになるのかは、雌にはないY染色体上の

性決定遺伝子「Sry」が発現するかしないかによって決定されると報告されておりましたmemo

しかし、雄雌の違いを生み出す基となる生殖巣原基そのものを作り出す仕組みや

「Sry」を働かせる機構については十分に解明されていませんでしたdash

 

熊本大学でマウスを使った試験により、遺伝子発現を調整する転写因子である

「Six1/Six4」が生殖巣原基の素となる細胞を作り出すのに重要な遺伝子の発現を

コントロールしていることが判明しましたsign01

また、「Six1/Six4」は「Sry」の発現をコントロールしている遺伝子の発現を

さらに上流で調節していることも明らかとなりましたsign03

 

と、いうことで「Six1/Six4」が生殖巣原基を作り出すことと、

雄になる最初の仕組み(性の決定、Sryの発現)を

コントロールしているということが示されましたflair

この報告は、発生生物学の専門誌「Developmental Cell」に掲載されておりますshine

2013年8月10日 (土)

第44回道東3地区家畜人工授精技術研修会

初ブログ書き込みですheart01

先日釧路で行われた道東3地区人工授精研修大会に、ET研究所の若手職員3人と研究室長の合計4名で参加してきましたhappy01

そしてET研究所からも1演題、研究発表させていただきましたhappy02
演題は「黒毛和種におけるIARS遺伝子多型が採卵成績や胚移植後の受胎率に及ぼす影響」です。


今年の四月に本遺伝子病が農水省から公表され、研究所内だけではなく、現場でも大変問題となっているIARS異常症。

以前、本病については本ブログにも掲載させていただきました(・ω・)ノ

今回の道東3地区では、そのIARS遺伝子型が採卵成績や受胎率に対してどのような影響を与えているか、ET研究所内で調査した結果を発表させていただきましたtaurus

Dsc_2132

↑内心バクバク演者


会場の方々からは、研究内容に大いに関心を持っていただき、質疑応答の際にも色々と助言をいただき、大変参考になりましたnotes

発表後に、研究室長と今後のIARS異常症の研究方針についてディスカッションをしていると、すごくワクワクしてきて、内心、大興奮していました笑up


今後、IARS異常症について、全国の研究機関から新たな情報が発信されていくと思いますが、我々ET研も情報を発信し、生産者や現場で働かれる方々と情報を共有していけたらなぁと思います。


また、今回の道東3地区研修大会では、他にも11演題の発表があり、私個人的にも大変興味をそそる内容もありましたhappy02

やはり、現場に基づいた内容の発表が多く、現場に出た時のふとした「疑問」をさらにデータを取って、証明していく研究内容は、今後役立つ内容ばかりで大変勉強になりました。


もっともっと私も勉強しなければと思いますflair


2013年8月 2日 (金)

ホルモン剤による受胎促進

研修にこられる方から移植後に何かホルモン剤は投与していますか?と聞かれることがよくあります。

ET研では移植後にhCG製剤やGnRH製剤を投与することもあり、黄体の機能促進によるP4強化を期待しています。

一方で、その効果についてはどの程度のものなのかは判断が難しいところで、個人的にはおまじない的な気持ちで使用していましたgawk

今月号の臨床獣医という雑誌にホルモン剤による牛の繁殖管理という特集が組まれていて、この疑問に答えてくれていましたshine

記事によると

発情後5~7日のhCGおよびGnRHの投与は排卵を誘起し、その後の血中P4濃度が上昇する。また、受胎率の改善がみられる報告がある。

とここまでは良く知られているところで、続きを読むと

GnRHにくらべhCGのほうが血中P4濃度を速やかに上昇する。その理由はhCG自体がLH作用を示すことと、半減期が長いため既存の黄体も刺激するflair

と書かれており、要はhCGのほうが効果が高いup

ということのようです。どちらを選択するか判断に悩むこともありますが、その作用機序も絡めて理解することができスッキリしましたhappy02

しかし、記事にも注意をしてありましたがhCGを35日間隔で繰り返し投与すると抗体が産生されることから、高頻度の使用はしないようにする必要があるようです。

まとめると、基本はhCGで投与歴が浅いものはGnRHほかを処置することで受胎率がよくなるかもしれない、ということですねgood