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2015年10月

2015年10月15日 (木)

なぜ採卵成積は低下するのか

今日

「繰り返し採卵すると採卵成積は低下するのか」

といったようなことを尋ねられました。

 改めてデータをまとめてみると、牛群全体で見れば、採卵を繰り返すことで、採卵成積(回収胚数、移植可能胚数)は低下するようです。

 一方、何度も採卵しても安定して高い採卵成積を維持している個体(20世紀産まれにも関わらず、まだ現役のドナーもいたり・・・)もいれば、最初からほとんど受精卵が回収できない個体もいます。

 最終的にはほとんどの牛が採卵成積が低下し、淘汰されるという経過を辿るのですが、これほどまでに個体差が出るということは、同一個体の繰り返しの採卵成積の低下には、卵子のエイジングといった経時的な変化以外にも、何らかの要因が潜んでいることは間違いなさそうですeye

 固有の卵子数はもちろん、免疫系との因果関係も気になるところですeye

2015年10月14日 (水)

復活

昨夜ナイタイは初雪がふりました!snow
どんどん寒くなってきてます。wobbly

胚の性判別時にはバイオプシー(細胞片を回収)が必須なのですが、

大事な受精卵を切るなんて!coldsweats02
切った後も生きてるの・・・?

と思う方もいるのではないでしょうか。
バイオプシーした胚は移植されるまでインキュベーターにいれ、大事に保管しています。

写真はバイオプシー後4時間たったところ。

Pa160085

透明の細胞が栄養膜細胞で、切った直後は細胞が少なくなりさみしく感じます・・・
しかし、インキュベーター内で切った栄養膜細胞はどんどん育っていき、まるで切る前のように戻るのです。recycle
これが移植しても大丈夫のサインでもあります。
毎回胚の生命力に感心し、受胎するんだぞ!と念をこめてストローにつめるのでした。taurus

2015年10月12日 (月)

男女の関係

本日は人間のお話ですが、男女の性比についての研究を紹介いたしますscissors

米ハーバード大学と英オックスフォード大学の共同研究チームが男児と女児の割合は受胎時には同じなのですが、女児の方が妊娠期間中に死亡する数が多く、結果的に男児の出生数がわずかに多くなっているとの研究論文を発表しているそうですflair

米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されておりますmemo

これまでの研究では、男児は女児より受胎数が多く、妊娠期間中の死亡数も多いことが報告されていましたが、今回の研究結果では男性胚の死亡率が女性胚に比べて高くなる特定の時期が妊娠期間中に存在することを発見したそうですeye

・男女の割合は受胎時には同じtoilet

・受精後第1週は、女性胚より男性胚の方が多く異常胚になる傾向が認められたshock

・10~15週の間は、女児の方が胎内での死亡リスクが高いvirgosweat01

・妊娠後期(28~35週)における流産の数は女児より男児の方が多いdown

膨大なデータの分析によりこれらのことが明らかとなりましたが、全体的に見ると男児より女児の方が多く子宮内で死亡していることが今回の調査結果は示していたのだそうですbearing

これは人間のお話なので、ウシに当てはまるかどうかは全く分かりませんが、体外受精後に変性して死んでしまっている胚は雄胚が多いのかなとか、胚移植で雌胚を移植すると流産が多くなってしまうのかなとか考えてしまいますねthink

2015年10月11日 (日)

農場視察その2

アメリカ農場視察第2弾です。
今回は搾乳農場です。牛の頭数は2200頭、ほぼホルスタインですtaurus
搾乳は1日3回で平均乳量は13927kgとのこと。
割と一般的な規模かもしれません(こちらでは数字の感覚がおかしくなります…。)
こちらの農場、何が特別かと言いますとCRI社のゲノミック牛生産プログラムに参加している農場とのことで、CRI社の精液を使用してその産子のデータを蓄積しているそうです。
ということもあり、CRI社としても是非見てもらいたいのか力の入った視察でした。
牛群の特徴として、長期連産性を求めた牛群らしく、足の強さや乳頭の形など非常に整っている印象を受けましたhappy02

Image



先日のデイリーエキスポとはまた違う、骨太な牛たちでした。また牛のサイズも日本と比べ大きいとう印象はなく、飼いやすさを求めていることがよく伝わりました。


さて、今回で海外視察の報告は最後です。同時にアメリカ分場も閉鎖となりました。
ですが、このCRI社によるプロフィットツアーは来年も開催予定とのことです。実は紹介した農場以外にも色々と行っているのですがあまり紹介しすぎると来年の参加者から怒られそうなのでこれくらいにしておきます。
海外の情報を得る良い機会にもなりますので、ご興味のある方は是非来年のツアーにお申し込みください!きっと驚きの連続になることでしょう!

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2015年10月10日 (土)

農場視察

海外視察中のアメリカ分場です!
さて、視察先の農場をせっかくなのでご紹介したいと思います。

Dsc_0517



たくさん並んだ白いもの。何だかわかりますか?
実はこれ、すべて子牛を飼養するカウハッチなのです。
…たくさんありすぎて訳がわかりませんね。
こちらの農場は近隣農場から子牛を引き取るか預かるかして、
4ヵ月齢まで育成する保育農場だそうです。
子牛の数なんと8000頭!!
これぞアメリカという感じですね。そのスケールに圧倒されます。
こちらでは初乳を飲ませた1日齢の子牛を集め、2ヵ月カウハッチで飼養し、
その後フリーバーンの牛舎で4ヵ月まで飼養します。
驚きな点はこれだけの規模にもかかわらず死亡事故の割合が1%!
圧倒的な数値です。特別なことはしているようには見えなかったのですが…。
ミルクは近隣農場から集めた分娩後早期の出荷できないものに、代用乳を混合しパスチャライズしたものを給与したり、ワクチンは数種類投与するなどのコストをかけていることはポイントかもしれません。

2015年10月 9日 (金)

大切なモノ

仕事をする上で一番大切なものとはなんでしょう?eye

情熱とかビジョンとか,もちろんとっても大切ですが,もっと具体的なもので考えてみてくださいsmile

 

私にとってはこれsign03

Image1

 

卵巣でございますlovely

 

この卵巣は,と場(ウシを肉に加工する工場)で採取したものです。

卵巣は食べることができないので,本来ならば廃棄されるのですが,この卵巣を使って研究を行っている機関は非常に多いです。

ET研でもほぼ毎日,この卵巣を使って実験していますconfident

卵巣がなければ仕事にならないくらい,大切な存在です。

私たちはこの卵巣から卵子を採取しているのですが,今週はおよそ2000個の卵子を集めましたshine

1個の卵子が1頭のウシになるとすると…なんとウシ2000頭分sign03taurustaurustaurus

世の中があっという間にウシだらけになりますね。

…実際には2000個の卵子のうち,受胎可能な高品質胚へと発生するものは1割にも満たないため,そんなことはないんですけどねcoldsweats01

 

役目を終え,と場で解体されるウシたちは美味しいお肉となるだけでなく,研究材料としての卵巣を私たちに供給してくれるのです。

と場の卵巣がなければ,ウシの繁殖研究はもっとずっと遅れていたはずです。

この贈り物を無駄にすることなく,ウシの幸福に貢献するような研究に活用したいと思います。

ウシたちよ,いつも卵巣をありがとうshineいつか必ず恩返しをしますので…

2015年10月 8日 (木)

台風23号

台風23号が北海道に近づいているようですtyphoon

今日は朝方研究所の麓の方の木が二本ほど倒れ、停電してしまいましたflairdown

実験の真っ只中で停電に見舞われた人もおり、手元を懐中電灯で明るくして、非常用電源に顕微鏡のコンセントを挿して継続するシーンもありました。

来客予定の方の中には飛行機の欠航に見舞われた方もいたようですbearing

明日は採卵日なので受精卵のデリバリーに影響が無ければいいのですが・・・。

北海道の皆様はどうかお気をつけてお過ごし下さい。

2015年10月 7日 (水)

THE まめちしき

昨日紹介されたイベルメクチンについてpencil


寄生虫といえばイベルメクチン!というくらいいろいろな寄生虫症に効果があります。

牛用に販売されているイベルメクチン薬のすごいところはimpact
皮膚への塗布で外部寄生虫、内部寄生虫に効果あることだと思います。wink
外部寄生虫とは皮膚の表面や毛に寄生するもので、内部寄生虫とは体内に寄生する寄生虫です。

体の中に潜む寄生虫を塗り薬でやっつけるなんて、なんて素晴らしい薬なのeye
学生のころすごく感動したのでした。shine

イベルメクチンは皮膚に投与すると速やかに皮下の毛細血管より吸収され全身の血液循環に入るため内部寄生虫にも効果を発揮するようです。

現場でも使いやすい素晴らしい薬なのでした。note
ノーベル賞受賞おめでとうございますhappy02

2015年10月 6日 (火)

寄生虫とノーベル医学賞

今回は繁殖とは関係ない記事ですが、、、

昨日発表されたノーベル医学生理学賞に、日本から大村智・北里大特別栄誉教授が選ばれましたupup

大村教授は、アフリカなどの感染症に大きな治療効果を上げている薬剤「イベルメクチン」を開発。

この薬は、年間3億人に使われ、アフリカや南アジア、中南米で寄生虫による失明や深刻な病気の危機におびえる人々を救ったそうです。

寄生虫の教科書を見ても、大体の寄生虫はイベルメクチンで一発で駆除できるように記載されてます。
人の領域でも、犬猫の領域でも、牛の領域でも、イベルメクチンは切っても切り離せない関係です。
ET研究所でも、放牧から帰ってきた牛には、必ずイベルメクチンを牛の背中にかけてます。

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大村教授は1974年、この薬の元になっている化学物質を作り出す微生物をゴルフ場の土壌の中から見つけ、「この微生物は他と違う」と直感したそうです。
この菌から寄生虫を麻痺させる作用を発見しました。

ペニシリンしかり、イベルメクチンしかり、人類の大きな発見は、意外と普通の日常の中に隠れているみたいですね。

それをいかに発展させるかは、個人の力量にかかっているみたいです。

私は、人類で初めて牛のお尻に手を入れた人を心から尊敬しますsmile

2015年10月 5日 (月)

尾の動き

精子特異的カルシニューリン(カルシウム-カルモジュリン依存的脱リン酸化酵素)が精子の成熟に必須で、その酵素が欠損すると精子の動きが悪くなり、受精が出来なくなることを大阪大などの研究グループがマウスを使った実験でつきとめましたhappy01

米科学雑誌「サイエンス」の電子版に発表しておりますgood

一般的に免疫抑制剤として使われているサイクロスポリンやFK506という薬を服用した男性の受精能が低下することに着目し、これらの薬剤がカルシニューリン阻害剤であることから精子の成熟にカルシニューリンが関与していると考えたようですthink

カルシニューリンは精子にだけ存在するタイプがあることをつきとめ、精子カルシニューリンが作られないようにしたマウスでは精子の尾の付け根部分が硬くなり、動きが鈍くなることを明らかにしましたflair

このため、卵子の透明帯を突き破ることができずに不妊となることが分かりましたsweat01

最初に紹介しました免疫抑制剤であるサイクロスポリンやFK506で精子を処理しても受精能は落ちないのですが、マウスに薬剤を投与すると不妊になるそうで、このことから精子特異的カルシニューリンは精巣上体でのみ機能し、精子の成熟に必須な因子であることを突き止めましたsecret

さらに薬剤の効果は一過性で、薬剤投与を中止すると受精能は回復するのですsign03(生まれたマウスも正常であることは確かめられておりますscissors

さぁ、とうとう男性用の避妊薬の発売が現実味をおびてきましたねcoldsweats02

男性側に原因のある不妊症の解明にもつながるでしょうconfident