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2021年2月

2021年2月28日 (日)

借り玉、精子生産

中々興味深いニュースがあったので報告します。
(Donor-derived spermatogenesis following stem cell transplantation in sterile NANOS2 knockout males.2021)

ヤギで他の個体の精巣に精子の素になる細胞を移植して精子を作らせた、という報告です。

どういうことかと言いますと、NANOS2という遺伝子を破壊(KO)すると、精巣の構造に問題はないのですが精子ができない個体を作る事ができます。
このNANOS2-KO個体(レシピエント)の精巣に他の個体(ドナー)の精子を作る素の細胞(精子幹細胞)を移植すると、なんとドナーの精子をレシピエントが作り出したそうです。

理論的には可能だと思うのですが、現実のものとなったことは大きな衝撃です。
今回は、マウス、ブタ、ヤギで成功しており、さらにウシでもKOはできているのでウシへの応用も時間の問題です。

他の個体の細胞が入ったら免疫で除外されそうな気もしますが、とりあえずは大丈夫だったようです。

ただ残念なことに、できた精子には受精能?が無いようで、そこに免疫との関連も考察されおり、今後の発展に期待したいところです。

ヤギにウシの精子作らせるとかが実現するのも時間の問題ですね。

2021年2月27日 (土)

NFkB

子宮内膜炎について文献読んでいると、時たま目にする言葉にNFkBというものがあります。
略さずに書くと
Nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells
となるようで、核内で働く、B細胞によって活性化される、免疫グロブリンAのκ鎖に結合する、エンハンサーとして見つかったのでこの名前のようです。
最初はB細胞特異的と思われていたようですがその後全身で見つかり、免疫反応に重要な役割を果たします。
ちなみにエヌエフカッパービーと読みます。

気になった理由が以下の論文でして
(The Pre-Implantation Embryo Induces Uterine Inflammatory Reaction in Mice.2021)
マウスの子宮で発言する遺伝子を調べたところ、子宮内に受精卵が入った場合と入ってない場合で異なる遺伝子がいくつか見つかったそうで、それらがNFkBとの関連が強いそうです。
免疫と繁殖というのは深い関係があるので、このNFkBも受胎(この場合は着床とそれに関する子宮の変化)との関連が伺えます。
面白そうだと調べると、牛でも同様?の報告ありまして
(Proteome of the early embryo-maternal dialogue in the cattle uterus.2012)
こちらは子宮内のタンパク質を調べたようです。
こちらでは受精卵があると、NFkBが下がるという内容になっています。

どのような機序かはわかりませんし、マウスと牛では着床の様式が異なるのでこれまた複雑なんでしょうけど、免疫と繁殖の関連を理解する上でのキーとなるものみたいですね。

20年子牛ランキング!

興味をそそられるタイトルです

最近、農業新聞に連載されてました

「子牛ランキング」と言いつつも

市場取引価格順に市場名が掲載されているものです

1位は鳥取県家畜中央市場、

やはり「白鵬85の3」強し!

といったところでしょうか

白鵬雌の平均価格は100万5403円とのことです

むかーしですが、

鳥取県在住の方から

「県内に2頭のモンスター牛が誕生しました!」

と連絡いただいたのが「白鵬85の3」を

初めて知ったきっかけでしたが(もう1頭は百合白清2)、

まさにその通りになりましたね~

と今回の新聞記事を読んで非常にしみじみとしております

そして、2位以下は

薩摩中央家畜市場(鹿児島)、

飛騨家畜流通センター(岐阜)、

関家畜流通センター(岐阜)、

で、昨年1位の但馬家畜センター(兵庫)は5位となりました

兵庫県は6年ぶりに首位を明け渡す形です

こちらの背景はインバウンドの影響が大きいかもしれません

その他、都城地域家畜市場(宮崎)は20位から6位にジャンプアップし、

「耕富士」の強さがでているようです

薩摩中央の順位から「安福久」もまだまだ根強い人気をほこることが推察できます

今回の結果ですが、もちろん、受精卵の人気度にも連動しているように思いました

さてさて、

我々ですが今週は宮崎にお邪魔して

「神照栄」、「福晴茂」などの受精卵も製造しました

「福晴茂」は枝も取れるとのことで県内では期待感が高まってるようですね

新規種雄牛も続々と出てきました!

次年度の採卵・移植事業も楽しみです!!

ということで、九州エリアは宮崎で今年度の採卵事業は終了となります

農家の皆様、1年間、ご協力いただき誠にありがとうございました

しかし、今年度の九州におけるOPUの過熱感はすごかったです

次年度も何か新しいこと始めたいと計画中です

お楽しみに~

2021年2月24日 (水)

凍結卵リスト(2021.2.22)

☆特別価格銘柄(福之姫・幸紀雄・勝早桜5・若百合)最後です☆

好評いただきました特別価格銘柄も今回のリストで最後となりました。

人気の種雄牛で作成した受精卵がかな~~りお求めやすくなっております。

ドナーも「安福久」や「百合白清2」など人気のドナーから作製された受精卵が

数多くでていますので、是非ご覧になってくださいdiamond

この機会に血統更新や肥育などなどに活用してもらえれば幸いですhappy01

 

和牛凍結卵リスト☞20210222.pdfをダウンロード

 

new福之姫ドナー誕生しました☆

ET研究所に初の福之姫ドナーがやってきました!!

早速採卵しリストに提示してあります。

血統は福之姫-安福久-忠富士です。

本牛は前駆の付着と皮膚の質感がいいです。バランスも悪くないと思います。

今回は「紀多福」を授精し3元交配にしています。

福之姫の肥育成績は良さそうとのうわさは聞きましたが、

ドナーとしては今後どう評価されていくのでしょう・・?

福之姫の今後の活躍に期待したいですねlovely

 

☆新規種雄牛が大幅プライスダウン☆

前回の新規種雄牛での受精卵は完売いたしました。

たくさんのご応募ありがとうございますcatface

将来活躍してくれたらうれしいです!!

今回は1銘柄の2卵と少ないですが、今回も値下げしてリスト提示いたします。

 

・「元白鵬」(㈱十勝家畜人工授精所) 白鵬85の3-百合茂-安福165の9 

 

taurusホルスタインX卵taurus

今回も共進会で活躍したファミリーで作成した受精卵を多く揃えていますので、

共進会に興味がある方は是非ご検討くださいeye

 

ホルスタイン凍結卵リスト☞x20210222.pdfをダウンロード

ホルスタイン凍結卵血統☞x210222.pdfをダウンロード

 

3月2日(火)が申し込み締め切り日となっております。

価格や申し込みに関してご不明な点があれば

お近くのJAまでお問い合わせください。

受精卵や血統に関するご意見・ご要望があれば

お気軽にコメント欄まで!お待ちしておりますvirgo

 

F

2021年2月22日 (月)

ファージ主流に?!

諸先輩方が、内膜炎について記載されていて、自分も調べていたら母校でお世話になった先生が内膜炎について、取り組んでいる内容をたまたま見つけたのでご紹介します。

【ファージ療法で制圧する産業動物の 薬剤耐性菌感染症とその伝播
藤木純平助教(酪農学園大学獣医学群)】より

この取り組みでは、子宮内膜炎の治療で用いられている抗菌薬の問題点の中で、主に薬剤耐性に着目して、バクテリオファージを用いた内膜炎起因菌に対する抗菌活性を検討しています。

バクテリオファージは、生物の教科書でよく目にしますので、おなじみかもしれません。形がかなり特徴的ですよね。ファージを利用した治療は日本ではほとんど行われていなかったようなのですが、近年再注目されているようです。

現在、医療および獣医療領域では特に薬剤耐性が問題となっていますね。

抗菌薬の作用により菌は耐性菌として進化?し、選抜された耐性菌と薬のいたちごっこが続いているため、抗菌薬の慎重使用も求められています。

その中で、細菌にのみ溶菌作用を有し死滅させるバクテリオファージに着目して、抗菌薬とは異なるアプローチを行うことで耐性菌の問題に対する試みをin vitroで、行っているようです。

現段階では、溶菌作用を示すファージの分離を濁度法で検討し、血中の炎症性サイトカインの遺伝子量の定量を行ったとのことで、今後は子宮内膜炎マウスモデルを作成し行っていくようです。

すぐに実用化されるかは、わからないですが、将来ファージを用いた治療が主流になる時代も、来るかもしれませんね^_^

S

2021年2月21日 (日)

内膜炎の診断

先日も書きましたが、ちょっと最近内膜炎が多いです。

現場レベルではかなり気を使って内膜炎の牛を除外しているつもりなのですが、採卵時に内膜炎になっているケースが出てしまいます。

時期によって、多い少ないがあるので、牛側のコンディションとの関連は大きいと感じております。
夏、冬に多く、痩せている牛でも多い印象なのでストレスや飼料の影響も大きいと思います。

ただ、我々でできる範囲でもう少しなんとかしたいですね。

文献探すと、血中のマーカーから炎症との関連を調べることができるようですね。
必ずしも子宮内膜炎であると言う訳ではありませんが、乳房炎やその他の炎症が繁殖性に悪影響であることに異論はないと思います。
(Development and evaluation of a real-time PCR panel for the detection of 20 immune markers in cattle and sheep. 2020)

他にも以前プログでも扱ったPON1とか?
http://etken-blog.lekumo.biz/et/2019/09/post-2cfd.html

ちょっと採血を処置に追加して、各マーカーと繁殖成績調べるのとか面白そうですね。

2021年2月20日 (土)

子宮内膜炎の治療

先日の採卵時、子宮内膜炎の牛が何頭か出てしまいました。
白いブツ?が出てきたわけですが、この時点でテンション下がります。

奇跡的に?数個正常卵が出た牛もたまにいますが、だいたいは使用できる卵は0であることが多いです。

内膜炎に関しては極力避けるよう牛を選抜したり薬剤を注入して対処していますが、どうしても時たま出てしまいます。

何かいい対策はないものかと見ていたら、内膜炎の治療についての文献見かけたので紹介します。
(Using chitosan microparticles to treat metritis in lactating dairy cows 2020)
キトサンを注入してその効果を見た、という論文です。
昔キトサンて話題になりましたが、その後音沙汰なくどうなったものかと思っていましたが昨年新たな報告があったようです。

で、その内容はというと...キトサンは良くないみたいです。
この文献においてと一応ことわっておきますが、キトサンを注入して治療した区と、抗生剤で治療した区と何もしなかった3区で比較しています。

結果、治った率、その後の受胎率、淘汰率全てキトサンが悪い結果となりました。つまり何もしないより悪い...。
ちなみに抗生剤はやはり効果あるみたいです。ただ休薬期間があるかつ効果もそれほどといった感じなのでそこは考えものですが。

地道に子宮洗浄するとかPG打って排出を促すのくらいなんですかねー。

2021年2月19日 (金)

X染色体上のマーカーを含めたゲノミック評価

ゲノミック評価において性染色体のマーカーは利用されないことが多いです。

これは、雄と雌で伝達様式が異なるなどの理由があります。

しかし、X染色体は、ゲノムの中で2番目に大きい染色体であり、

表現型に影響を及ぼす遺伝子が含まれていると考えられます。

本論文では、密度の異なるチップのSNPマーカーを用いて

片方のチップで無いマーカーを補完する(インピュテーション)

際の精度とX染色体上のマーカー使用の有無による

乳形質や繁殖形質、増体形質等様々な形質の

ゲノム育種価の予測精度を比較しております。

結果はX染色体のマーカー使用により、

ゲノミック評価の精度がわずか(0.3~0.5%)に向上しました。

また、X染色体を除いた際の予測精度の低下は、

同程度の大きさの常染色体マーカーを除いた時よりも

小さかったようです。

この理由については、X染色体のマーカー密度が

低いことと本試験でのデータ構造が影響していると

考察されています。

本論文では、X染色体のマーカーを加えることによる

信頼度の向上はわずかであるが、

マーカー利用のコストがかからないため、

使用を推奨しております。

ET研のデータには、X染色体のマーカー情報がない個体も

多数いるため、利用は難しいかもしれませんが、

一度分析してみたも良いかもしれません。

黒毛の枝肉形質では、ゲノムインプリンティングの影響も

示唆されてるので、次はこのあたりの論文を紹介したいと思います。

2021年2月18日 (木)

受精卵の遺伝子を書き換える

近年何かと話題のゲノム編集。このET研ブログでも何度か取り上げていますが違った視点からゲノム編集の現状をお伝えします。

ゲノム編集という言葉を新聞などで見聞きすることもあるかと思いますが、ゲノムDNA自体を書き換える行為自体はもっと昔から行われています。特定の遺伝子を働かなくさせたノックアウトマウスが初めて作られたのが1980年代であることが一例かと思います。

じゃあゲノム編集がなぜ最近話題になったかというと、2012年に新しいゲノムDNAの書き換え技術「CRISPR-Cas9システム」(クリスパー・キャスナインと読みます。格好いいですね。)が開発されました。
これは、複雑で一つの遺伝子を書き換えるのに何年もかかっていたものを簡単に、低コストで行うことができる技術であり、以前にくらべて書き換え技術が爆発的に普及したことにあります。

またこの方法の利点は他にもあり、今までできなかった種類の細胞にも適用できるようになりました。それが受精卵です。受精卵にゲノム編集を施し、出生に至ったというニュースが以前ありましたが、それにもこのCRISPR-Cas9システムが使われました。

前段がまた長くなってしまいましたが、今回紹介するのはウシの受精卵に直接CRISPR-Cas9した場合、どの程度思い通りにゲノム編集ができているかを調べた論文です。

Evaluation of mutation rates,mosaicism and off target mutations when injecting Cas9 mRNA or protein for genome editing of bovine embryos
Sci Rep. 2020 Dec 18;10(1):22309.doi: 10.1038/s41598-020-78264-8.

この論文でわかったことは大きく分けて2つです。
① 編集に必要なCas9タンパク質は、mRNA(タンパク質の設計図の状態)で受精卵に入れるよりも、タンパク質そのものの状態で入れた方が効率が良い

② 細胞分裂を繰り返した受精卵を調べてみると、書き換えに成功している細胞と失敗している細胞が混在している場合がほとんど(モザイク卵といいますが、やましい意味はありません)。

論文の筆者は②について、遺伝子の書き換えには受精してから18時間の受精卵を用いたためではないかと主張しています。受精してから18時間たつと、受精卵はすでに最初の細胞分裂の準備をかなり進めており、一つの細胞の中に細胞二つ分のDNAが入っているためです。 

またこの論文では深堀していませんでしたが、CRISPR-Cas9システムの欠点としてDNAの目標にしていない部分も書き換えてしまう可能性が他の方法に比べて高い点があります(オフターゲット効果といいます。格好いいですね)。

CRISPR-Cas9システムは確かに画期的な方法ですが、倫理面と技術面の両面でまだまだ改善の余地がありそうですね。

TKH

2021年2月16日 (火)

エネルギーの貯蓄と受胎率との関係

体内に十分なエネルギーがあると受胎しやすいよねという
論文を紹介します。

Inferences of energy reserves on conception rate of
suckled Zebu beef cows subjected to TAI followed by natural mating

こちらの研究では、BCS・ランプ(腰から尻にかけての肉)の
脂肪の厚み・生涯体重と、受胎率との関係性を調べました。
266頭のZebu肉牛について、分娩前165±14日、分娩時、
分娩後42±7日(排卵同期化の処置を始める日)、
82±7日(AI後30日)、112±7日(AI後60日)に、
上記3つの項目について計測しました。
供試牛は繁殖期の初めに排卵の同期化処置を行い、AIが終わって
10日以降は、この試験が終わるまで雄牛と供に放牧しました。


BCSの値が最も高い牛群は、AI後60日の時点での受胎率が
最も高く、また、流産する確率も他と比べて減少していました。
また、分娩前165±14日・分娩時に、ランプ肉の脂肪とBCSが十分
な牛は産後も受胎しやすくなることがわかりました。
一方で生涯体重に関しては、ほとんど関連性は見られませんでした。

単純な体重だけでなく、それぞれの体格に合った
適切な体型を保つことが、受胎率の向上に繋がるということですね。

ちなみに栄養素はまず最初に脳にとられ、その次に
心臓や肺、肝臓、泌尿器系にとられ、最後に生殖器、皮膚という
ように、その個体の生存に必要な順で吸収されるようです。
生殖器や皮膚はそこまで生存に大事ではないので、
栄養素が足りていないと、多くを他の臓器にとられて、
末端にまで及ばなくなってしまいます。
栄養バランスのとれた給仕をすることが繁殖にはとても重要になってきますね。

AM