先週、春機発動について書きましたが、その続きです。
ちょうど春機発動を促すホルモン処置に関する論文があったので紹介したいと思います
春機発動前のNellore種未経産牛におけるプロジェステロンをペースにした排卵誘起の方策
(原題:Progesuterone-based strategies to induce ovulation in prepubertal Nellore heifers)
Theriogenology 79 (2013) 135-141
【緒言】
春機発動を引き起こすための研究は様々おこなわれています。
プロゲステロンを処置すると下垂体のエストロゲンレセプターを減少させ、エストラジオールによるネガティブフィードバックを減退させることで、GnRHの放出を促すと考えられており、プロゲステロン製剤の使用で未経産牛が春機発動を迎えたとする報告があります。
そこで、この研究ではプロゲステロン製剤のCIDRとその他のホルモン剤を春機発動前のNellore種未経産牛に処置し、その後の発情、排卵、AIの受胎率を調査しました。
【方法】
エコーで7日間隔で卵巣を確認し、黄体のない牛を試験に使用。
試験1は3回使用した後のCIDRを12日間腟内に留置したもの(CIDR4)と無処置(CIDR0)のもので、その後の発情、排卵、AIの受胎率を調査。
試験2はCIDRのみの処置をコントロールとして、CIDR抜去時にeCGを200IU注射。
試験3は試験2に加えて、CIDR抜去時にeCG+ECP(シピオン酸エストラジオール)50㎎を注射。
試験4は試験3に加えて、CIDR抜去時にECPのみ注射で排卵率のみ観察。
【結果】
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発情発見率 |
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排卵した割合 |
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受胎率 |
試験1 |
CIDR 0 |
10.7%a(19/177) |
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18.6%a(33/177) |
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79.0%a(15/19) |
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CIDR 4 |
16.6%b(143/862) |
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39.1%b(337/862) |
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42.0%b(60/143) |
試験2 |
コントロール |
27.6%a(124/450) |
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53.3%a(240/450) |
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43.6%a(54/124) |
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eCG |
34.3%b(153/446) |
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72.0%b(321/446) |
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45.1%a(69/153) |
試験3 |
コントロール |
21.5%a(17/79) |
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45.5%a(36/79) |
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46.7%a(7/17) |
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eCG |
34.4%b(55/160) |
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75.0%b(120/160) |
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34.7%a(17/55) |
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eCG+ECP |
56.2%c(91/162) |
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90.1%c(146/162) |
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33.3%a(27/91) |
試験4 |
コントロール |
- |
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74.9%b(176/235) |
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- |
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eCG |
- |
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85.0%a(199/234) |
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- |
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eCG+ECP |
- |
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85.5%a(200/234) |
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- |
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ECP |
- |
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80.4%ab(197/245) |
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- |
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【感想】
結果より、CIDRを使用することで、Nellore種牛で春機発動を迎えさせることができました
また、CIDRの抜去時にeCGかECPもしくは両方を注射することでその確率は上昇することが明らかとなりました。
とくにeCGとECPを併用した場合には90%以上の牛が排卵しており、かなりの高確率で効果が期待できますね
この報告では3回も使用したCIDRをもちいていますが、これもミソのようで、低濃度のプロゲステロンのほうが高濃度より効果が高いとかLHの分泌が多くなるといった報告があるための処置であるようです
ただ3回も使用したCIDRを使うのは衛生面で気をつけなくてはいけないと思いますが…
今回の報告はET研究所ニュースでも紹介していますので、よければそちらもご覧になってみてください
ET研究所HP