本日のタイトル、「黄門様~」に見えて今日は水戸黄門の話かと思った方いるんじゃないですかぁ
・・・そんな人はいませんかね!笑
ET研では食肉処理場から卵巣をいただいてきて、卵子を吸引し、試験に利用したりしておりますが、卵巣に存在する主席卵胞や黄体、牛の発情周期等々で採取された卵子の品質や発育能に影響はないのかずーーーーっと気になっておりました
そこで、臨床獣医2014年11月号に
「Infuluence of corpus luteum and ovarian volume on the number and quality of bovine oocytes.」という論文の日本語訳が掲載されていたので紹介いたします
この論文では、卵巣の大きさや黄体の存在と大きさが回収される卵子数と品質にどのように影響するかを調べています
交雑種(ホルスタイン×コブウシ)の110個の卵巣を食肉センターから回収し、卵胞から卵子を吸引採取しました
卵子の品質は次のように分類しました↓
グレード1:3層以上の凝集した卵丘細胞で卵子が囲まれ、卵細胞質が均質で、透明帯の内側が満たされており、茶色を呈している。
グレード2:3層未満の凝集した卵丘細胞で卵子が囲まれ、卵細胞質は顆粒が凝集し、その周囲は明るい、ただし細胞質は透明帯内に満たされている。
グレード3:卵子に卵丘細胞が付着するも膨化しており、卵細胞質は凝集し、透明帯と細胞質の間に隙間がある。
グレード4:卵子に卵丘細胞は付着しておらず、卵細胞質は凝集し、異常な色を呈している。
975個の卵子を回収することができ、黄体があった卵巣は黄体がなかった卵巣に比べ、卵巣1個当たりの回収した卵子数、グレード1および2の卵子数が有意に多かったそうです。
しかし、本研究で回収した全ての卵子でみた時に、卵子の品質別の割合は、黄体の有無で有意な違いはみられなかったそうです。
黄体がなかった卵巣に比べて黄体があった卵巣では、グレード1の卵子を1つ回収できる機会が2.5倍、グレード1と2の卵子を4つ回収できる機会が2.8倍だったそうです。
黄体の直径は、良質な卵子を得る可能性に影響しており、黄体が大きいほど、1つのグレード1の卵子および少なくとも2つのグレード1および2の卵子を得る可能性が高かったそうです。
今回の試験ではP4のレベルは調査しておりませんが、黄体の存在はP4の影響により卵子の品質を改善するかもしれないことが示唆されました。
他の研究において、黄体の存在下では卵巣から回収される卵子数が多いことや体外での胚生産の成績を改善するのに黄体が不可欠であることなどが報告されています。
黄体のある卵巣から回収した卵子は、卵割率が高く、移植可能胚が多く生産できたとの報告もありますが、黄体の有無で回収した卵子の数と品質に影響はなかったとの報告もあります。
この研究では、外因性のP4を用いたり、機能的な黄体を維持することは、胚生産の効率を向上させるかもしれないと考察されておりました